婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「東日新報では綾月大尉がいる街中であやかしの犬が現れたのが都合がよすぎる、という論調でしたね」
「あれは本当に偶然です。目の前で犬の様子がおかしくなって、みるみるうちに大きくなって……」

 思い出すだけでぞっとする。燈子は思わず自分を抱きしめていた。

「颯雅様は人の姿でいらして、だからたまたま骨董店にあったサーベルであやかしを倒しておいででした。その場に妹も居合わせて、それを見た誰かが誤解して婚約者と報じたのかもしれません。自作自演なら、最初からサーベルを持っておいででしたでしょう」

 ふむ、と彼は顎に手を当てる。
「どだい、あやかしを操るなんて無理ですからね。あやかしの死体を検分した人から話を聞きましたが、普通のあやかしであったと。しかし狼の血を引く綾月大尉ならば操るのも可能なのではとの疑念がぬぐえない」
「できていたらもっと楽にたくさんあやかしを退治していると思います」

「実のところ、私は自作自演とは思っていません」
「え?」
 燈子は意表をつかれて目を丸くした。発言から、彼も疑っていると思っていた。

「取材をしていたらわかります。帝国の守護神はすさまじい方だ」
 言ってから、廉次の目がここにいない誰かへの嫌悪で細まる。

「あのゴシップによくもまあ各新聞社が乗っかったものです。番記者の中には私と同様、怒っている者がいますよ」
「そうだったんですね」

 燈子の全身から力が抜け、はあっと息をついた。
 もう味方はひとりもいないのかと思っていた。
 わかってくれる人がいた。それがこんなにもありがたいなんて。