婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 彼は注文を取りに来た女性にコーヒーをふたつ注文した。手慣れたスマートさに、エリートは違うな、と感心してしまう。

 彼は世間話をして緊張をほぐしてくれた。取材で出会ったという愉快な人の話は、深刻さに足をとられていた燈子の心を明るく浮上させてくれる。
 注文の品が届いて店員が去ると、彼は切り出した。

「ここなら人に話を聞かれることはありません。どういったご用件でしょう?」
 眼鏡越しの視線が鋭く燈子に注がれる。
 ひやり、と急に空気が冷えた気がした。

「あの……」
 どう説明しようか。道中も考えていたのだけど、うまくまとまらない。
 間が持たなくて、コーヒーに砂糖とミルクを入れてかき混ぜる。

 様子を見ていた廉次が口を開いた。
「婚約のゴシップについてですか? 自作自演の記事についてですか?」
「両方です」

 頭の回る人だ、と感心した。こちらの話したいことを誘導してくれるようだが、記者はそういうことがうまいのだろうか。

「具体的には? まずは婚約ゴシップから話してくださいますか」

 燈子は不安げに目を細めて彼を見た。
「ここで話したことは記事にしないでいただけますか?」
「もちろんです」
「本当でしょうか」
 請け合う彼に、それでも心配になってしまう。