婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「このままでは軍のお荷物だ」
「どうしてですか?」

「あやかし退治が俺の存在意義だ。できないなら意味がない」
「人の姿でもあやかしを退治しておられました」

「あんな雑魚で喜べるのは新兵だけだ」
 吐き捨てる颯雅はすさんで見えた。
「武器がなければあやかしに対抗できない。俺は狼であることに甘え、どこかでおごっていた。牙をなくした俺はなんと脆弱か」

「そんなことはありません」
「実際、武器もなくあやかしと相対したとき、ひとりでは倒せなかった。狼ならば簡単に倒せたんだ」
 むしろ颯雅はすごいのだと功之輔棒から聞いている。棒切れひとつで五匹ものあやかしを相手に、真世を守りながら応援が来るまで耐えたのだ。が、彼には歯がゆいようだ。今の彼を彼自身が認めてくれたら、苦しみは軽くなるのではないだろうか。

「颯雅様は颯雅様であられればいいと思います」
「俺が俺であるとは、どういうことだ」
 不機嫌な声に、燈子はうろたえた。反論されるなんて思ってもみなかった。前にこう言ったときは、彼を肯定して受け入れているのだとわかってもらえたのに。

「俺のなにを知っている。俺はずっと狼だった。そのときの体力、能力が失われている。それがどれだけ不安かわかるか!?」

 ……わからない。
 人間になれたほうがいいと思っていた。
 一緒に買い物をしたときは楽しそうだったし、必要としてくれて結婚を申し込まれ、彼も人の姿を受け入れて喜んでいるのだと思っていた。