どんよりと重い気持ちを抱えたまま邸内を歩いていると、女中が掃除をしながらおしゃべりをしているのが見えた。
「ゴシップがひどいわね。颯雅様が人間になったのは嘘だったとか」
「颯雅様の存在自体が嘘とか、あきれるわね」
「なにそれ」
燈子が思わず声を上げると、女中たちははっと口をつぐんだ。
「詳しく教えてください」
燈子の頼みを、女中は最初、渋った。
だが、燈子があんまりにも頼むので、買い物のついでにゴシップ誌を買ってきて渡してくれた。
見た瞬間、沸騰した。
女中たちが口にした噂に加え、跡継ぎに困った公爵が人間を代役に立てたが逃げられたというものもあった。それを知っている婚約者を口封じに殺そうとしたとか、まったく作り話もいいところだ。あやかしの正体は軍用犬だという飛語まである。
さらには『颯雅に殺されかけた』との現役軍人の証言が載っているものもあって、あの人だ、と燈子は目を吊り上げた。
街中で疑惑を否定してまわりたいが、信じてもらえないだろう。
新聞という大きな力の前に自分など無力だ。
いらいらしてしまい、蓄音機の音楽を聴いてもまったく癒しにならない。
颯雅の母が心を幽玄に住まわせている状態でよかったとすら思う。息子が疑惑の渦中にいると知れば苦しくてかなわないだろう。ある意味で彼女はずっと幸せな状態だろうか。
そう思ってから、首を振る。
そんなわけがない。人の幸不幸を自分が勝手に決めてはならない。
帰ってきた功之輔によると、報道の否定はしているが、世間はセンセーショナルな話題のほうが受け入れやすく、否定は浸透しないらしい。
「ゴシップがひどいわね。颯雅様が人間になったのは嘘だったとか」
「颯雅様の存在自体が嘘とか、あきれるわね」
「なにそれ」
燈子が思わず声を上げると、女中たちははっと口をつぐんだ。
「詳しく教えてください」
燈子の頼みを、女中は最初、渋った。
だが、燈子があんまりにも頼むので、買い物のついでにゴシップ誌を買ってきて渡してくれた。
見た瞬間、沸騰した。
女中たちが口にした噂に加え、跡継ぎに困った公爵が人間を代役に立てたが逃げられたというものもあった。それを知っている婚約者を口封じに殺そうとしたとか、まったく作り話もいいところだ。あやかしの正体は軍用犬だという飛語まである。
さらには『颯雅に殺されかけた』との現役軍人の証言が載っているものもあって、あの人だ、と燈子は目を吊り上げた。
街中で疑惑を否定してまわりたいが、信じてもらえないだろう。
新聞という大きな力の前に自分など無力だ。
いらいらしてしまい、蓄音機の音楽を聴いてもまったく癒しにならない。
颯雅の母が心を幽玄に住まわせている状態でよかったとすら思う。息子が疑惑の渦中にいると知れば苦しくてかなわないだろう。ある意味で彼女はずっと幸せな状態だろうか。
そう思ってから、首を振る。
そんなわけがない。人の幸不幸を自分が勝手に決めてはならない。
帰ってきた功之輔によると、報道の否定はしているが、世間はセンセーショナルな話題のほうが受け入れやすく、否定は浸透しないらしい。



