婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 東日新報の虚報に怒りをたぎらせて出勤した颯雅は、昼前に単身、戻ってきた。
 出迎えた燈子に、颯雅は吐き捨てる。
「しばらく駐屯所への出勤はなくなった」

「新聞のせいですか? あんなの嘘ですのに」
「違う。なぜか狼に戻れなくなっている」
 確かに今朝は起きたらすでに人の姿で、驚いたものだった。

「しばらく前から、念じても狼に戻れなくなっていた。これまでは朝には戻っていたのだが」
「そうだったのですね」
 まったく燈子は気づかなかった。彼の気遣いかもしれないが、すぐに教えてもらえなかったのがさみしい。

「このあと研究所で調べてもらう予定だ。帰りは遅くなるかもしれない」
「わかりました。どうぞお気を付けて」
 お昼を食べた彼は運転手に送られて研究所へと向かった。

 見送った燈子はそわそわして彼を待った。
 彼が狼に戻らなくなったなら、通訳もキスも必要もなくなる。自分は用済みだ。

 それではここにいられなくなる。研究所で原因が判明すればよいのだけど。
 思ってから、そんな自分を嫌悪した。

 これでは狼に戻ることを願っているかのよう――いや、戻ってほしいと思ってしまっていた。そのほうが自分に都合がいいから。
 居場所が欲しいからといって彼の苦境を望むなんて。自分はなんて利己的で醜いのだろう。彼の幸せのためには人の姿のほうがいいに決まってる。