婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「こいつが呼び出してくれたほうが楽ですよ」
「それもそうか」
 病狗はよだれをたらしながら頷く。

「女。お前の提案を飲んでやる。背けばいつでも殺せることを忘れるな」
 真世はがくがくと頷く。

「ならば」
 病狗が言いかけたとき、走りこむ足音が聞こえ、颯雅が現れた。

***

 颯雅は真世を探して走り回っていた。
 あんな女でも落命すれば燈子が気にするに違いないから、さっさと連れ帰りたい。

 いっそ狼に戻って匂いをたどりたいが、変化ができない。気が急いて集中できないせいだろう。
 だから人の姿のまま走り、頭を巡らす。

 街はずれに空き家があり、野犬がたまっているという話があった。
 そちらにいないことだけを確認し、あとは応援に任せよう。ひとりで探すのは限界がある。

 そう思って街はずれに行き、妙な気配を感じた。
 嫌な予感とともに気配の元に駆けつけ、驚愕する。

 そこにいたのは真世とあやかしの犬たちと、病狗。
 颯雅はとっさに身構えたが、武器はなにもない。

 あやかしたちが警戒するように離れ、真世がその隙に颯雅のもとに駆け寄る。
 颯雅は違和を感じたが、それを追及する(いとま)などない。

「颯雅様!」
 すがりつこうとする真世をよけ、颯雅はあやかしたちと対峙する。
 人面の犬が憎悪で颯雅を睨む。