婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

「ち、違う……婚約者じゃない」
「ほう? ならばさっさと食ってしまうか」
 病狗の開けた口は大きく、真世の頭をひとのみにしそうだ。

「や、やめて! 私は被害者なの! どうしてまたこんな目に遭わないといけないの! 婚約したのは姉なの! なのに私が婚約者にされたのよ!」
「お前の姉だと?」

「そうなの、本当は私が婚約するはずだったのに、無理やり入れ替えさせられたの」
「ややこしいな。本当はお前が婚約者なのか?」
「違うわ、姉が婚約したの、本当よ!!」
 真世は必死に訴える。こんなところで殺されるなんてまっぴらだ。

「そいつは今どこだ?」
「颯雅様の家で暮らしてて……」
 真世は必死に頭を巡らす。どうやったらこの危機を乗り越えられるのか。

 どうやらこの病狗は颯雅を恨んでいるようで、だから燈子を狙っているようだ。自分が二度も襲われたのは間違われたせいだろうか。
 まったくあいつは疫病神だ。すべての不幸の根源。

「助けてくれたら姉を連れてくるから……」
 真世は必死に言葉を絞りだす。
「だから私は助けて」
 病狗はしばらく考えるように真世を見る。

「いいんじゃないですか」
 家の奥から男性の声がかかった。が、姿は見えない。