「あいつが襲われればいいのに」
そうだ、そうなるべきだ。
だけど、どうやったらあやかしに燈子を襲わせられるだろうか。
考えながら歩いていると、いつのまにかうら寂しい通りに来ていた。
空き家が多くてひとけもなく、昼間なのに薄暗く見える。
そういえば、空き家にはあやかしや野犬が住み着いて危険だという。
この辺りに燈子を呼び出そう。
ほくそ笑んだ真世がきびすを返したそのとき、着物のすそをひっぱられた。前のめりに倒れると、ずるずると引きずられて空き家の敷地に引き込まれる。
「いやああ!」
混乱した口から出るのは悲鳴ばかり。
引きずる力が緩んだすきに体を起こすと、目のまえにはあやかしの黒い犬がいた。ピンと立った耳は尖っており、吊り上がった目も口も赤く、鋭い牙が覗いている。
「ひい!」
慌てて逃げようとするが、そちらにもあやかしの犬。
気が付けば五匹ほどに取り囲まれていた。
「だ、誰か……!」
助けを呼ぶ声は、だけど小さい。恐怖に焦れば焦るほど声が出ない。
「お前は帝国の守護神とやらの婚約者だな。よいところに現れたものだ」
ひときわ大きな犬が現れた。が、その顔は中年男性のもので、真世の喉からは悲鳴すらも消えた。
「守護神などとまったく御大層な。殺戮魔にすぎんものを」
「あ、あ……」
真世は言葉が出ない。人面犬はおそらく病狗に違いない。
「婚約者を殺したら、あいつはどんな顔をするだろうなあ」
にたにた笑いに、張り付いた真世の喉がようやく動いた。
そうだ、そうなるべきだ。
だけど、どうやったらあやかしに燈子を襲わせられるだろうか。
考えながら歩いていると、いつのまにかうら寂しい通りに来ていた。
空き家が多くてひとけもなく、昼間なのに薄暗く見える。
そういえば、空き家にはあやかしや野犬が住み着いて危険だという。
この辺りに燈子を呼び出そう。
ほくそ笑んだ真世がきびすを返したそのとき、着物のすそをひっぱられた。前のめりに倒れると、ずるずると引きずられて空き家の敷地に引き込まれる。
「いやああ!」
混乱した口から出るのは悲鳴ばかり。
引きずる力が緩んだすきに体を起こすと、目のまえにはあやかしの黒い犬がいた。ピンと立った耳は尖っており、吊り上がった目も口も赤く、鋭い牙が覗いている。
「ひい!」
慌てて逃げようとするが、そちらにもあやかしの犬。
気が付けば五匹ほどに取り囲まれていた。
「だ、誰か……!」
助けを呼ぶ声は、だけど小さい。恐怖に焦れば焦るほど声が出ない。
「お前は帝国の守護神とやらの婚約者だな。よいところに現れたものだ」
ひときわ大きな犬が現れた。が、その顔は中年男性のもので、真世の喉からは悲鳴すらも消えた。
「守護神などとまったく御大層な。殺戮魔にすぎんものを」
「あ、あ……」
真世は言葉が出ない。人面犬はおそらく病狗に違いない。
「婚約者を殺したら、あいつはどんな顔をするだろうなあ」
にたにた笑いに、張り付いた真世の喉がようやく動いた。



