婚約者は狼神!? 帝国の守護神の通訳として雇われた私、なぜか溺愛されてます!

 とにかく食料だ。
 山の中を探したが、なにも見つからない。狩りなどしたこともないし、なにより生肉なんぞ食いたくもない。自分は人間だ、獣と同じものなど食べたくはない。

 仕方なく山を下り、夜の闇に乗じて人の家に入り込んで食料を漁った。
 ひっそりと食べられることもあれば、見つかって化け物と恐れられることもあった。

 番犬に襲われたときには激怒した。
「俺はこんなに犬を思っているのに、どうして襲ってくるんだ」
 がぶりとかみつくと、しばらくしてその犬はあやかしと化して彼の従者となった。

 彼は大喜びで仲間を作った。
 仲間が食料を調達してくれて、楽に暮らせるようになった。
 これも仲間……もう家族であるあやかしたちがいてくれるからだ。

 最初の家族を人間に殺され、自分も殺されそうになった――いや、人間としての自分はすでにあいつらに殺された。

 だから復讐として人間を襲った。
 人の悲鳴はなによりもの癒しの音楽だった。

 たわむれに食べてみたら、これが意外とうまかった。妖力も上がる。一石二鳥だから、以降は仲間に狩らせて食べた。
 今の自分は完全にあやかしだ。だからどうした。人間より上位の存在になったのだ。
 ようやく幸せが訪れたかと思ったとき、意外なことが起きた。

 颯雅が現れたのだ。
 神の子孫の銀狼――のちに帝国の守護神と呼ばれる颯雅。

 あやかしに噛まれると病気になり命を落とすことがある。だから軍があやかしを討伐する際にもけがには慎重で、逃げれば深追いしないことが多かった。犬のあやかしに追いつく人間もいない。
 だが、颯雅は違った。