泡と恋

先輩の涙を見て、私はふと思った。

十年前に私がよく読んでいた、『人魚姫』。

人魚姫は、溺れかけた王子を助けたものの、人間になった代わりに奪われた声のせいで真実を話す事が出来ず、最後は、海の泡となって消えてしまった。

私のこの恋は、人魚姫と似ているな、と思った。

助けたのは自分なのに、中々それを言う事が出来ず、結局、二度と会えなくなってしまった。


まるで、人魚姫がなってしまったあの泡のように、短くて儚い恋だった。

小さくても、日の光を浴びて、光輝き、生き延びようとしている、海の泡。

その泡のように、私の恋は、小さいけれども、しっかり存在していたという証拠を残して、海の泡となって、消えたのだった。