まだ風歌以外の女性には、心が動くことはない。
 いつこの苦みから解かれるのかを思うと気が遠くなる。

 むしろ、これを胸の奥底に抱いたままでも歩みを進めたなら、僕はこれから新しく出会う相手を思う深い優しさと、それを守る悲壮なまでの強さとを手に入れるかもしれない。

 変えることのできない少なからずいびつなこの心と、僕とは無関係に目まぐるしく変わっていく街の景色をそのまま愛することが、本当の出発点なのだとしたら。
 
 僕はこれからも、二人のことをまだ何度も何度も振り返ることだろう。
 が、過去への悔恨にどれほど足を取られようとも、その重たい足を引きずるようにしてでも、とにかく前へ、前へと進むこと。

 こうしている今もそのすべての終わりに向かい、時は流れ止まることはないのだから。



(了)