あいつとGO

それは、いつもより暑い夏の日。

「ねえ、廃校を探検しない?」とクラスメイトのあすみが、俺に話しかけた。

「冗談よせよ、おれは、苦手なんだ」

あすみは、ますます、拍車をかけてくる。

「夜の廃校って、おばけ屋敷だよね」

こいつ、何を狙ってやがる。

廃校は、小学校だった。村の外れにあり、誰も立ち寄らない。そもそも、幽霊は怖い。うわさでは、夜になると、分からない音が、響いているという。そんな、廃校には、近寄りたくないと俺は、思った。



なんだかんだで、廃校に来てしまった。夜の廃校は、不気味だ。



「あすみ、怖くないか?」おれは、逃げ出したかった。

「全然、怖いの、修一」あすみは、いたずらっぽく、笑った。

表の水飲み場では、ぴちゃ、ぴちゃと水の音が、聞こえてくる。



電気は、ついてないので、懐中電灯が頼りだ。

こんなの間違っている。普通は、女子が、怖がりだろう。

あすみの魂胆が、分からない。ちなみに、あすみが前を歩いていて、俺があとをついている。あすみの髪が、風で揺れていて、こいつが、幽霊に見えてくる。



「ねえ、教室に入ろう」あすみは、ドアを開けた。そこは、かつて、俺たちが学んでいたクラスだった。

「ここだ、ここ」あすみは、自分の席を見つけた。

おれは、ドアの前で、たたずんでいた。



「懐かしい」あすみは、そう言って俺を見た。確かに、そういう思いは、浮かんできたが、にぎやかだった昼の風景とは違い、さみしくて、もの悲しい。



そんな時、突然机が、浮かんだ。

「何」あすみは、ぎょっとした。信じられない光景を見たおれは、その場から、逃げた。

一目散に、この場から、でないとヤバい。



ところが、出口が見つからない。ピアノの教室からは、音が聞こえてくる。もはや、正常でいられない。あすみが、追いかけてきた。



「1人で逃げるなんて、卑怯者」

「ああ、悪かったな、しかし、こわいものは、こわい」



「俺の眠りを邪魔するものは、誰だ」姿は見えなかったが、声が聞こえてきた。

「何」あすみは、想定外の展開に、動揺している。思わず、俺の手を握ってきた。

俺は、もしかしたら、この場所でどこかに死体があるのではないかと、考えた。それを見つければ、何とか、この状況を打破できるのではないかと。



「死体を探そう」俺は、あすみに問いかけた。

「嫌よ、怖い」あすみは、震えていた。

「俺たち、相棒だろう、2人ならできる」俺は、自分に言い聞かせるように、話しかけた。



形勢は、逆転した。あすみは、俺の後につき、おれは、考えながら、校内を探検した。死体を探して、弔ってやるのは、死者への礼儀だ。なぜ、冷静でいられるかは、分からない。そして、死体があるかどうかも、分からない。

それでも、確信があった。



ひっそりとたたずむ廃校に、誰も訪れない。廃校には、記憶が残っていた。

その死体は、ピアノ教室にあった。本当の死体だ。

「あすみ、警察に連絡しよう」

「誰だろう、この人」

「分からないが、このままじゃ、可哀想だ」



あすみは、俺の顔をみながら

「ごめん」と謝った。

「気にするな」と俺は、答えた。



「私、あなたのこと、見直しちゃった。」

「褒めても、何もないぜ」



あの一件は、終わり日常が戻ってきた。

あすみは、俺の相棒となり、絆は強くなった。