「玲ちゃん!おはよう!」
後ろから可愛い声がきこえて振り返ると、大好きな友達がいた。
朝からきちんと整えられた髪の毛と、くるんと巻かれたまつ毛。そして透明で後ろの背景も透けて見えるんじゃないかと思うくらい白い肌。
自分が男だったら絶対に好きになっていたと思う。
南 日那ちゃん。初めて名前を知ったとき、太陽みたいだと思った。
「ねぇ、玲ちゃん!この新曲聴いた?」
日那ちゃんは私の隣に並ぶと、スマホの画面を向けてくる。画面には大好きなアーティストの画像が映っていた。
「聴いたよ!めっちゃ、良かった!」
「だよね~。ねぇ、今度またライブやるらしいよ!一緒に行こうよ!」
「うん!行きたい」
日那ちゃんはパッと花が咲くように笑うと、すぐさま調べはじめる。
「ちょっと待ってね~」
俯きながら真剣に探す姿に、つられて笑いがこぼれた。
「日那ちゃん、真剣だね」
「当たり前だよ!玲ちゃんとライブ行きたいもーん」
日那ちゃんの言葉に自分の口角が上がっていくのがわかる。
長い廊下からやっと教室が見えてきたとき、右側にいた日那ちゃんとその前方からやってきた誰かが軽くぶつかった。
というより、向こうがわざとぶつかってきたように見えた。
「ごめん、南さん大丈夫?怪我なかった?」
「うん、大丈夫だよ~」
日那ちゃんの顔を覗き込むように少し屈んでいる三人組の男子たち。
この人たち、同じクラスの人だ。
そこまで親しくないから、あんまり知らないけどお調子者で目立つ人たち。
「てかさ、南さん今日も可愛いね」
「なぁー。まじで可愛い」
「…ありがとう!」
日那ちゃんを一瞬にして取り囲んだ男子たち。私は隣にいたのに、すぐに蚊帳の外になった。
日那ちゃんは最初はぎこちなく笑っていたものの、持ち前の明るさでだんだんその男子たちと話が弾んできていた。
どれくらい時間がたっただろうか。
盛り上がる横でポツンと一人きり。
廊下にあった時計をチラッと見ると、まだ三分くらいしか進んでいなった。
私も空気が悪くならないように、静かに微笑むが誰一人私を見てくれない。
「えっ。南さんこのアーティストの歌聴くの?俺もよく聴く!」
「そうなの?」
「うん、最近出た新曲もまじでいいよなー」
「うんうん!」
「ねぇ、もし良かったらさライブとか一緒に行かない?」
私はごくりと息を飲む。持っていた鞄にぎゅっとシワが寄った。
「…ごめん、ライブは玲ちゃんと行くから。ね?」
日那ちゃんは笑顔で私の方を向いた。
男子たちの視線を感じながらも私は静かに頷いた。
何を言われるのか怖くて、私の視線は日那ちゃんから自分の足元へと変わった。
「…そっか。残念」
「振られてやんの!」
「はぁ?振られてねーし」
落ち込む一人の男子をからかう二人の男子。
やがて、その三人組は日那ちゃんにだけ、またねと手を振ると風のように去っていった。
日那ちゃんは私に向き直ると、何事もなかったように話を戻した。
「ねぇ、玲ちゃんきいてる?」
「…うん、きいてるよ」
嬉しそうに話す日那ちゃんの横で、私は上手く笑えなくなっていく。
教室に入ると、おはようと声が飛び交う。でもそれは、日那ちゃんにだけ。
日那ちゃんの周りには今日も人が集まる。さっきまで私の隣にいた日那ちゃんはあっという間に遠くの存在になった。
でも、私は思ったよりも不安じゃなかった。だって、
「玲ちゃん、お昼一緒に食べよー」
「玲ちゃん、一緒に帰ろう!」
どれだけ囲まれていても日那ちゃんはいつも私を選んでくれる。最後には絶対に名前を呼んでくれる。
移動教室のときもペアを組むときも、いつもずっと一緒。
それもそのはず。だって私たちは皆が出会うよりも少し先に、出会っているから。
だから日那ちゃんの優しいところも魅力的なところも、皆より知っている。
私は囲まれている日那ちゃんの後ろ姿をこれから先、何回見るのかな。
それでも、日那ちゃんは大切で大好きな友達。
「玲ちゃん!」
振り向いて、いつも絶対に手を伸ばしてくれるから
ーー私はまんまとその手を掴んでしまうんだ。
後ろから可愛い声がきこえて振り返ると、大好きな友達がいた。
朝からきちんと整えられた髪の毛と、くるんと巻かれたまつ毛。そして透明で後ろの背景も透けて見えるんじゃないかと思うくらい白い肌。
自分が男だったら絶対に好きになっていたと思う。
南 日那ちゃん。初めて名前を知ったとき、太陽みたいだと思った。
「ねぇ、玲ちゃん!この新曲聴いた?」
日那ちゃんは私の隣に並ぶと、スマホの画面を向けてくる。画面には大好きなアーティストの画像が映っていた。
「聴いたよ!めっちゃ、良かった!」
「だよね~。ねぇ、今度またライブやるらしいよ!一緒に行こうよ!」
「うん!行きたい」
日那ちゃんはパッと花が咲くように笑うと、すぐさま調べはじめる。
「ちょっと待ってね~」
俯きながら真剣に探す姿に、つられて笑いがこぼれた。
「日那ちゃん、真剣だね」
「当たり前だよ!玲ちゃんとライブ行きたいもーん」
日那ちゃんの言葉に自分の口角が上がっていくのがわかる。
長い廊下からやっと教室が見えてきたとき、右側にいた日那ちゃんとその前方からやってきた誰かが軽くぶつかった。
というより、向こうがわざとぶつかってきたように見えた。
「ごめん、南さん大丈夫?怪我なかった?」
「うん、大丈夫だよ~」
日那ちゃんの顔を覗き込むように少し屈んでいる三人組の男子たち。
この人たち、同じクラスの人だ。
そこまで親しくないから、あんまり知らないけどお調子者で目立つ人たち。
「てかさ、南さん今日も可愛いね」
「なぁー。まじで可愛い」
「…ありがとう!」
日那ちゃんを一瞬にして取り囲んだ男子たち。私は隣にいたのに、すぐに蚊帳の外になった。
日那ちゃんは最初はぎこちなく笑っていたものの、持ち前の明るさでだんだんその男子たちと話が弾んできていた。
どれくらい時間がたっただろうか。
盛り上がる横でポツンと一人きり。
廊下にあった時計をチラッと見ると、まだ三分くらいしか進んでいなった。
私も空気が悪くならないように、静かに微笑むが誰一人私を見てくれない。
「えっ。南さんこのアーティストの歌聴くの?俺もよく聴く!」
「そうなの?」
「うん、最近出た新曲もまじでいいよなー」
「うんうん!」
「ねぇ、もし良かったらさライブとか一緒に行かない?」
私はごくりと息を飲む。持っていた鞄にぎゅっとシワが寄った。
「…ごめん、ライブは玲ちゃんと行くから。ね?」
日那ちゃんは笑顔で私の方を向いた。
男子たちの視線を感じながらも私は静かに頷いた。
何を言われるのか怖くて、私の視線は日那ちゃんから自分の足元へと変わった。
「…そっか。残念」
「振られてやんの!」
「はぁ?振られてねーし」
落ち込む一人の男子をからかう二人の男子。
やがて、その三人組は日那ちゃんにだけ、またねと手を振ると風のように去っていった。
日那ちゃんは私に向き直ると、何事もなかったように話を戻した。
「ねぇ、玲ちゃんきいてる?」
「…うん、きいてるよ」
嬉しそうに話す日那ちゃんの横で、私は上手く笑えなくなっていく。
教室に入ると、おはようと声が飛び交う。でもそれは、日那ちゃんにだけ。
日那ちゃんの周りには今日も人が集まる。さっきまで私の隣にいた日那ちゃんはあっという間に遠くの存在になった。
でも、私は思ったよりも不安じゃなかった。だって、
「玲ちゃん、お昼一緒に食べよー」
「玲ちゃん、一緒に帰ろう!」
どれだけ囲まれていても日那ちゃんはいつも私を選んでくれる。最後には絶対に名前を呼んでくれる。
移動教室のときもペアを組むときも、いつもずっと一緒。
それもそのはず。だって私たちは皆が出会うよりも少し先に、出会っているから。
だから日那ちゃんの優しいところも魅力的なところも、皆より知っている。
私は囲まれている日那ちゃんの後ろ姿をこれから先、何回見るのかな。
それでも、日那ちゃんは大切で大好きな友達。
「玲ちゃん!」
振り向いて、いつも絶対に手を伸ばしてくれるから
ーー私はまんまとその手を掴んでしまうんだ。
