余命僅かな君との最期の日々

 
 そして翌日、ぬいぐるみを持った榊原さんが元気よく俺の家の前に現れた。
 

 「……何をしに来たんだ?」

 日曜日は特に一緒に遊ぶ約束とかしていなかったはずだが。

 「そうだね、お家デートっていう感じかな?」

 俺は無言でドアを閉めた。
 そもそも死神がいるからデートじゃないし。

 「なんでよ! お家デートしようよ」

 そう、榊原さんが大声で叫ぶ。

 「だったら連絡してから来てくれ」

 今日は一日アニメを見ながらごろごろする予定だったのだ。

 「サプライズだと思って喜んでよ!」
 「誰も喜ばねえよ」
 「いーれーてーよー!!!」

 と、彼女が大声で叫び始めた。
 その声の勢いはすさまじく、周りに響き渡る。

 そして、その声に驚いたのだろうか。
 近くの人たちが数人見ている。

 くそっ。このままだと、周りに迷惑だし、そもそも俺も榊原さんと同類だと思われる。

 「はあ、仕方ねえ」


 仕方なく家に入れる。そして家に入る際に、「しっかし、大声で叫んでみるもんだねえ」と彼女が悪ぶれもなく言ってきた。


 「……あれは俺の温情だぞ」
 「えー、でももしかしたら通報されてたかもよ?」
 「うん。通報されるんだとしたら確実にお前だ」
 「えー」
 「それで、来た理由を話せ」
 「理由なんて会いに来た。それだけでいいでしょ?」
 「良くないだろ」
 「じゃあ、私が来なかったほうがよかったってこと?」
 「いや、そうじゃないけど」
 「ツンデレ?」
 「ツンデレじゃないよ」

 困る。どうやっても言いくるめられそうだ。

 そして、彼女は俺の部屋を物色し始めた。

 「へー、これが男子の部屋なんだね」
 「……変なものはないからな」
 「分かってるよー。もしかしてエロ本とかないかなって思っただけ」
 「今の時代はスマホだろ」
 「え!? 見てるってこと?」
 「見てねえよ」

 別にエロ画像とか興味なんてないし、そもそも見てたとしても、そのことを女子に言うような人がいるとは思えねえ。普通大体の女子は嫌うと思うし。

 「てかさ、榊原さんはそう言うの読んでないの? なんとなく読んでそうなイメージあるけど」
 「っ馬鹿言わないで、そんなの読んでるわけないじゃない。だってああいうのってなんか、あれでしょ?」
 「否定しすぎて逆に怪しいんだが」

 必死過ぎてな。

 「怪しくないよ。それ言うんだったら殺人否定したら殺人犯になることになるよ」
 「確かに。そうだな。俺が悪かった」
 「素直だねー」
 「うっせえ!!」

 素直で悪かったか。


 「さて、なんか遊べるものある?」


 と、俺の部屋を再び探り始める。


 「これなんてどう? ゲーム」
 「それ俺の何だが。お前の物みたいに言わないでもらえるか?」
 「別に言ってないよ? あと、お前なんて言わないでよ!!」


 そう言って、ゲームを勝手に入れて、テレビにつなげだしてる。


 「ここはお前の家か」
 「うん。そうだよ!!」


 どうやら彼女に遠慮と言う二文字はないようだ。
 そして彼女がいれたゲーム、それは、有名なゲーム、ホワイティプロジェクトと言うゲームだった。内容としては、様々なクエストをクリアしていくというものだ。バトルの内容としては、通常攻撃で必殺技を放つために必要なマジックポイントを貯め、マジックポイントがたまったら、一気に技を放つというものだ。
 これに二人協力できるモードがある。それを踏まえたうえで、彼女は提案したのだろう。


 「じゃあ、早速やるか」
 「うん」


 そして二人でどんどんと様々なクエストをクリアしていく。俺はこのゲームもうクリアしたことがあるので、上手く立ち回れている感じがする。
 そして、やはりこのゲーム自体すごい爽快感だ。敵をスキルで薙ぎ払っていくその感じがたまらない。


 「あ、ボス出てきたね」
 「そうだな」


 と、鬼のような風貌のボスを相手にする。とはいえ、やることは同じだ。通常攻撃でスキルゲージをため、スキルを放つ。ただ、それだけだ。
 俺との連続攻撃で、ボスが怯み、スキルを放ち勝ちだ! と思ったのだが、そこで、ボスの攻撃スピードが速くなった。


 彼女が「えええ」とわかりやすく戸惑う。俺は、前に見た攻撃モーションなので、なんとか避けれてはいる。しかし、経験者の俺でさえそうなのだ、初見の榊原さんにとっては厳しいだろう。あっさりと彼女のキャラは死んでしまった。


 「どうしよう、浩二君」
 「大丈夫。すぐに復活させる」

 そう言って、榊原さんのキャラの近くに行き、蘇生行動をとる。

 「うう、ありがとう」

 と、彼女が言ったが、俺も敵の攻撃をよけるので精いっぱいでなかなか蘇生行動に移れない。

 「もう私のことはいいから、やっちゃって」
 「いや、二人で倒したほうがいいだろ」
 「ありがとう。優しいね」

 おや、猛烈に感謝された。
 いつものあいつのキャラじゃないな。

 そして、なんとか、瀕死になりつつも、榊原さんのキャラを蘇生する。

 「本当にありがとうね。さって、私も恩に報いなきゃ!!」

 そう言って、再び攻撃を加えていく。今度は俺が完全に敵の注意(ヘイト)をもらっているからか、攻めやすそうに見えた。
 そしてそのまま彼女が必殺技の『ラグジュアリブレイク』を放ち、無事に倒した。

 「やった!」
 「やったー!」

 と、俺たちはハイタッチする。

 「いやー楽しかったねえ」

 と、感慨深そうに榊原さんが言った。

 「俺はまあまあくらいだったけど」
 「えー。絶対楽しんでたでしょ。じゃなかったらこんな清々しい顔なんてしてないよ」
 「う」

 どうやら見抜かれていたらしい。なんとなく癪ではあるんだよな、俺が楽しんでたなんて思われること。

 「それじゃあ、今度は何しよっか。そうだ!!」

 そして榊原さんは思いついたように、「男女でしかできないことをしようよ!!」と、言ってきた。

 「はあ? ふざけるのも大概にしろ」

 すぐにそう返した。冗談でも思春期男子に行っていいことじゃねえ。

 「えー冗談じゃないのにな」
 「そうか、ならそういうことをしてみるか?」

 そして俺は榊原さんをベッドに押し倒した。

 「ふええ、やめてよ」
 「お前が変なことを言うからだ」
 「分かった、分かったごめんって」

 観念したよだ。
 俺はそっと手を戻す。

 「もう、びっくりしたよ」
 「調子に乗るからだ」

 とは言うものの俺自身もさっきの行動で心臓の鼓動が高まってしまっている。

 「てかさ、私に対してひどいよね。私寿命後四か月しかないのに」
 「そうは言われてもな。俺はそんなことで特別扱いはせんぞ。もし特別扱いされたいんだったら榊原さんの友達にでも泣きつけばいいじゃん」

 例えば相原さんとか。

 「またそういうことを言って。私は友達には知られたくないの。特別扱いされたくないから」
 「どっちだよ」

 特別扱いされたいのかされたくないのか。

 「そう言えば私の事を名前で呼んでよ」
 「へ?」

 名前でだと?

 「だって、ずっと苗字呼びじゃあだめでしょ。浩二君」

 確かに、彼女はずっと俺を名前呼びしている、
 それなのに、俺だけ下の名前で呼ばないのはフェアじゃないかもしれない。

 「分かったよ、鈴奈」

 そう言うと、鈴奈はにっこりと笑った。
 まるで下の名前呼びが嬉しかったかのように。