余命僅かな君との最期の日々

 
 そして、また日は経ち、再びテスト前になった。
  今回は期末試験であり、鈴奈が受けることのできる最後の定期テストだ。

 「今回は、ちゃんとやるって言ってたけど、どれくらいやるんだ?」
 「えっとね、一日五時間はやろうかな」
 「お、やる気だな」
 「だって、これが最後だし」

 テスト前に土曜日俺たちは図書館で勉強を始めた。
 図書館だから鈴奈もあまりふざけたりなんてできない。
 そのおかげで集中できる。

 「浩二君も頑張ってね」

 俺の教科書を覗きながら鈴奈が言う。

 「当たり前だ」
 「分からないことがあったら教えるから」
 「……俺の方がちゃんとやってる気がするが」

 実際、鈴奈はまともに宿題出してないし。
 とはいえ、悔しい事にテストでの点数は鈴奈の方が上だ。


 「よーしやるぞやるぞやるぞ」

 鈴奈はそう言って自分の頬をぱちんと叩いた。ついでに俺の頬も。

 「何すんだよ」
 「え? 気合い入れ」
 「それ……他人にもやるやつじゃねえだろ」

 そして図書館で熱心に勉強をする。
 そもそも鈴奈はともかく、俺は高三の夏休み、大事な時だ。
 推薦で大学に行くつもりの俺は、内申点を上げるために、定期テストの点はちゃんと取っておきたいところだ。
 だが、鈴奈、思ったより真面目にやってるな。
 図書館とは言え、もっとふざけながらやると思っていた。
 大事なんだな、次のテストが。

 そして俺たちは集中してやった。だが、一時間後……

 「寝てる……」

 鈴奈は爆睡していた。それはもう、気持ちよさそうに。

 「これは……」

 起こしたほうがいいのか、起こさない方がいいのか。
 今の鈴奈はそう簡単には起きなさそうな感じだ。
 正直起こすのは面倒くさい。起こさないでよ! なんて言われる可能性があるのだし。
 だが、寝ているというのは鈴奈にとって損なことだ。
 それに俺も隣でこんなに気持ちよさそうに寝られると、眠気に襲われる可能性がある。

 これは絶対に起こしたほうがいい。俺のためにも鈴奈のためにも。

 「おーい、鈴奈?」
 「……」

 やっぱり起きねえな、これは。予定を早めてもう死んでるとかないよな?

 「おーい、生きてるか?」

 顔をぺちぺちと叩く、だが、起きない。

 「はあ、っくそ面倒くさい」

 鈴奈の体を無理やり起こし、横にふらふらと揺らす。

 するとようやく鈴奈が起きた。

 「私……寝てた?」
 「ああ、めっちゃ寝てたな」
 「いやー、面目ない。寝ないように頑張ってるんだけどね、睡魔には勝てなかったか」
 「がんばるんだろ?」
 「そうだね。そのために携帯も電源切ったんだから」

 そして、鈴奈は再び頬を叩き「よし!!」と言って勉強を再開する。
 俺はそれを見て、教科書を読んで問題を解く。
 そして、三時間たったころにはだいぶ問題は進んでいた。鈴奈の方も、結構調子がいいらしく、もう結構いけそうな感じらしい。
 鈴奈は授業だけでもだいぶ授業を理解できる。そんな彼女が勉強を真面目にすると、もう向かうところ敵なしだ。もうテストでもかなりの高得点が取れるだろう。
 そして数時間後、鈴奈が完全ダウンしたタイミングを見て、俺たちは図書館を後にした。
 鈴奈は「四時間しか勉強してないよー」と、悔しそうな感じだった。

 「本当ありがとうね、手伝ってくれて」
 「ああ、こっちこそ。テスト勉強はかどったよ」

 そしてその日は帰宅した。だが、まだ勉強は終わりではない。その後、家でもビデオ通話を駆使しながら軽く勉強しあった。心なしか、いつもよりも勉強が進んでいる気がする。

 「はあ、夜も一緒に勉強できてよかった」
 「そうか」
 「なんかね、楽しい」
 「楽しい?」
 「うん。私ね浩二君と一緒の勉強なら結構できそう」
 「お前、それ勘違いさせるからやめろよ」
 「勘違いしてもいいんだよ?」
 「お前なあ……」

 異性というのは面倒だ。

 「ふふ……じゃあ、明日も図書館で」
 「ああ。じゃあな」

 そして俺たちは寝た。明日への体力を残すために。
 その夜、夢を見た。弟の康介に関する夢だ。

 俺には弟がいる。かわいい弟だ。

 弟が必死に俺の手をつかんでいる。
 弟が助けを求めている気がした。
 だけど、俺には残念ながら何もできない。

 所詮家から見捨てられている立場である俺には……