見慣れた道を車は軽快に走り抜けていく。
だけど帰宅したからと言って安心はできない。

家に帰ってまず最初にやらないといけないことは、隠しカメラを見つけることだ。
それから両親にこれまでの出来事を説明しないといけない。
これが一番荷が重いことだった。

怜也のことがあったのに、また同じような経験をしてしまったなんて説明しにくくて仕方ない。
もしかしたら学校を辞めて帰ってくるように言われるかもしれない。

放任主義だったお母さんが血相を変えている姿が浮かんでくるようだった。
雪菜の元から逃げ出すことができたものの、まだまだ問題は山積している。

「懐かしい」
バイト先だったファミレスの前で赤信号に捕まり、車が停止した。
「ここでバイトできてよかったです。大田店長と出会えて本当によかった」

だけど店長は答えず、真っ直ぐ前を向いている。
運転に集中しているのだろうと思って、あまり気に留めなかった。