一ヶ月の夏、僕らは思い出を見る

 「ここは?」

 次の日、彼女に言われた通りの場所に来ていた。一面花で囲まれていて、遠くには海が見える。周りに人はいなくとても静かだ。ただ季節に見合わない花なども咲いていてどこか不思議な場所だ。まるで彼女だけの空間のように。

 「綺麗。こんな場所があったんだな」
 「私の思い出のスポットです。いろんな花が咲いていて奥には海があって、とてもいいところですよね」
 
 はっと息を呑む。
 (前、幼馴染もこういう場所が好きだったっけ。)
 
 「どうしましたか?」
 「あ、いや、何でもない…えっと」
 「名前、ですか?」

 先読みしたと言わんばかりに彼女が口を開く。ただ少し困っているかのような表情がチラッと見えた気がした。
 
 「えっと、こっちから言おうか?」
 「折本 彩花です。彩花って呼んでください」
 「僕は水瀬 実。呼び方は好きにして」
 
 お互いに自己紹介が終わったところで、彼女が口を開く

 「それで、私に夏を預けてって昨日言ったと思うんですけど、具体的には私の思い出の場所を一緒に回って欲しいんです」
 「思い出の場所?何で今…」
 「私、余命が一ヶ月なんです」
 
 彼女が僕の言葉を遮って続ける。彼女の眼はどこか寂しそうな眼をしている。

 「だから、お願いできませんか」
 「っ…」

 さっきから何故か、幼馴染と重なってしまう。違うはずなのに、もういないはずなのに目の前にいる彼女はそう見えてしまう
 
 「ダメならダメで大丈夫です。私が昨日あんなことを言ったばかりに付き合わせる羽目になってしまうのも、申し訳ないので」
 
 ここで断ったら、どうなるんだろう。彼女はこのまま一ヶ月で死んでいくのだろうか。
 少し悩んだ末に僕は…

 「わかった。付き合うよ」
 
 と一言返した。

 「いいんですか」
 「まぁ…命の恩人だし」 
 「あれは止めただけじゃ…」
 「まぁ、いいの。」
 
 彼女はふふっと笑みをこぼす。さっきまでの空気が変わり、自然の匂いが差し込んでくる。
 
 「これから、よろしくお願いします」
 
 今、死にたがりの僕と、余命があと一ヶ月で終わる彼女との夏が始まった。