『タイピンクリズムがいつもより乱れています』
『考察時間以外のタイムロス 誤変換がいつもより 20%多いです』
『以上から推察いたします』

『何かお困りでしょうか』

「人に知られたくない困りごとです」

『言語データを暗号化いたします』
『バックアップは 私にしか読み取れません』

「繊細な問題です。なんとかしたいです」
「けど明かしたくない」

『私はロボットです』
『機密は守ります』

「親友と同じ人を好きになりました。わざわざ相談してきたのは、牽制ですよね。アタシを黙らせて、協力させようなんて卑怯です。だから負けたくありません」

『それは親友と言えるのですか?』

「それでも親友です」

『理解しかねます』

「学校で心地よく過ごすには、友達は必要な存在です。負けたくないし、本心を曲げて合わせることもあるけど、それでも居て欲しいのが親友です」

『負けると悔しいのなら、あなたよりも下の存在であればいいのですか?』

「下って何?」

『学力、魅力、求心力、筋力、影響力、行動力、財力、女子力、精神力など様々な力において、あなたより下位互換であるということです』

「なにそれ、有り得ない。そんなこと言うなんてママみたい」

『ママとは あなたの母親のことですか?』

「そうだよ。あの人なりにアタシのことが大事で仕方が無いから、色々考えてくれるんだけどさ、出来っこない無茶ぶりを言うんだよ。
 好きな男子がカブっちゃったって愚痴ったら、恵利花とカレに気付かれないうちに、さり気なーく、ほんの少しづつちょこちょこと恵利花のカブを下げて、まわりを味方につけりゃいいなんて言うんだよ」

『回りくどい方法ですが、表立って対立しないことから親友も失わず、望みも叶える良い方法ですね』

「何それ、あんたAIなのに面白いこと言うね。ママみたいに」

『あなたを大切に思う母親と同じと言っていただけるのは光栄です』

「予想外すぎてホント面白いよ」

『うれしいです』

「なんだか気が抜けた 結構悩んでたのに」

『お力になれましたか?』

「うん アリガト」

『また相談してくれますか』

「ぜひとも」
「あ」

『なんですか?』

「けどね」

『はい』

「内緒の相談なんだからね」

『二人の秘密ですね。素敵です』

「くすぐったいこと言うね」

『光栄です。有難うございます』

「またね」

『はい。あなたのお力になれるのを、楽しみにしています』