僕らは再び電車に揺られ、良い機会だからと先輩がある店に連れて行ってくれることになった。
「家の近所なんだ、これが」
「へぇ〜」
先輩と僕は最寄り駅が同じだ。だからといって、毎朝並んで通勤することもなければ一緒に帰ることもないけど。
「南口」
「賑やかな方ですね」
そうそう、と先輩が頷く。
「会員制の店なんだが、そこに紹介したい人がいてね」
僕は会員制と聞いて少し驚いた。そんな高級店行ったことがない。秘密倶楽部みたいなもんか?
「お前が考えてるのとは全く違うから。社交クラブみたいなところだよ」
社交クラブ? なんだそれ。もっと分からん。
改札を抜け、いつもとは違う出口へ向かう。
「ちょっと歩くぞ」
「うっす」
酔冷ましにちょうどいいや。少し先をスタスタ歩く先輩に付いていく。
「日向って帰国子女だよな」
「そーっすよ」
そういう先輩は米大の学士持ちじゃないですか。
繁華街をどんどん歩いていく。僕が住んでる側はマンションと住宅とお寺と神社と静かなところなのに、反対側はこんな賑やかなんだ。
「お前の英語キレイだもんなぁ。イギリス英語って、何と言うか上品でいいよな」
上品、僕の英語が、えへへ。
「気取ってるとか聞き取りづらいとか、よく言われてたんスよ。だから上品なんて先輩に言われたら、めちゃ嬉しいッスね」
流石先輩、分かってらっしゃる。
「僕の英語、ネイティブといえどお子様英語っすよ。14で帰国してますから」
2度目はYr10(中3年)で帰国したからなぁ。まだまだ子供だったよなぁ。
「へぇ〜、そういうもんか」
「先輩みたいに向こうの大学出た人のほうが、全然上っす。僕女性口説けませんもん」
先輩が間をおいて、鼻で笑う。
「なるほどね〜」
気がつくと繁華街を抜けていた。
「ところでただの好奇心で聞くんだが、生まれたのはどこ。あ、言いたくなきゃ……」
「ドイツです。ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフ」
繁華街の先はここも静かな住宅街になるんだ。どちらかと言うと僕の住んでる側と違い戸建てが多いな。
「デュッセルドルフか。流石に行ったことねーや」
デュッセルドルフかぁ、と言いながらブリーフケースを持ったまま両手を上げ大きく伸びをする。
「そこからフランス、イギリスですね」
「オレなんか日本の片田舎だぜ。生まれたときから世界を知ってるってすげー強みだぞ」
「だといいですが。小さすぎて、記憶にあるのはイギリスだけっすよ」
先を歩いていた先輩が振り返る。
「親が外交官って、やっぱり大変だったか。引っ越し先が異国じゃ簡単に友だちなんかできないだろうし」
「ええ、簡単じゃなかったかな。だから小学生で帰国した時できた友達は、今でも大切な親友なんですよ」
小4の春出会ったあの4人は、僕にとって生涯の親友なんだ。
「そういうことか。そりゃ、慎重になるな」
「そういうことっす」
「家の近所なんだ、これが」
「へぇ〜」
先輩と僕は最寄り駅が同じだ。だからといって、毎朝並んで通勤することもなければ一緒に帰ることもないけど。
「南口」
「賑やかな方ですね」
そうそう、と先輩が頷く。
「会員制の店なんだが、そこに紹介したい人がいてね」
僕は会員制と聞いて少し驚いた。そんな高級店行ったことがない。秘密倶楽部みたいなもんか?
「お前が考えてるのとは全く違うから。社交クラブみたいなところだよ」
社交クラブ? なんだそれ。もっと分からん。
改札を抜け、いつもとは違う出口へ向かう。
「ちょっと歩くぞ」
「うっす」
酔冷ましにちょうどいいや。少し先をスタスタ歩く先輩に付いていく。
「日向って帰国子女だよな」
「そーっすよ」
そういう先輩は米大の学士持ちじゃないですか。
繁華街をどんどん歩いていく。僕が住んでる側はマンションと住宅とお寺と神社と静かなところなのに、反対側はこんな賑やかなんだ。
「お前の英語キレイだもんなぁ。イギリス英語って、何と言うか上品でいいよな」
上品、僕の英語が、えへへ。
「気取ってるとか聞き取りづらいとか、よく言われてたんスよ。だから上品なんて先輩に言われたら、めちゃ嬉しいッスね」
流石先輩、分かってらっしゃる。
「僕の英語、ネイティブといえどお子様英語っすよ。14で帰国してますから」
2度目はYr10(中3年)で帰国したからなぁ。まだまだ子供だったよなぁ。
「へぇ〜、そういうもんか」
「先輩みたいに向こうの大学出た人のほうが、全然上っす。僕女性口説けませんもん」
先輩が間をおいて、鼻で笑う。
「なるほどね〜」
気がつくと繁華街を抜けていた。
「ところでただの好奇心で聞くんだが、生まれたのはどこ。あ、言いたくなきゃ……」
「ドイツです。ノルトライン・ヴェストファーレン州の州都デュッセルドルフ」
繁華街の先はここも静かな住宅街になるんだ。どちらかと言うと僕の住んでる側と違い戸建てが多いな。
「デュッセルドルフか。流石に行ったことねーや」
デュッセルドルフかぁ、と言いながらブリーフケースを持ったまま両手を上げ大きく伸びをする。
「そこからフランス、イギリスですね」
「オレなんか日本の片田舎だぜ。生まれたときから世界を知ってるってすげー強みだぞ」
「だといいですが。小さすぎて、記憶にあるのはイギリスだけっすよ」
先を歩いていた先輩が振り返る。
「親が外交官って、やっぱり大変だったか。引っ越し先が異国じゃ簡単に友だちなんかできないだろうし」
「ええ、簡単じゃなかったかな。だから小学生で帰国した時できた友達は、今でも大切な親友なんですよ」
小4の春出会ったあの4人は、僕にとって生涯の親友なんだ。
「そういうことか。そりゃ、慎重になるな」
「そういうことっす」
