カメラ映像が上下に激しくブレたあと、達也がカメラを構え直す。
「すみません、こんにちは」
カメラの前を歩いていく雄一が畑にいる男性に声をかけた。

しかし男性は耳が遠いのかこちらに気が付かない。
雄一は畑にあぜ道を歩いて更に男性に近づいた。
「すいませぇん! こんにちは!」

男性のすぐ真横までやってきて大きな声を上げると、ようやくこちらを振り向いた。
作業服姿の男性は80代くらいで顔はよく日焼けしてクワを持つ手はゴツゴツしている。
「なんだぁ?」

男性が怪訝そうな顔で雄一とカメラを構える達也へ視線を向けた。
「ちょっと聞きたいことがあるんですが、いいですか?」
「聞きたいことぉ? なんだぁ?」

男性がクワを杖代わりにしてこちらへ近づいてくる。
「あの、その山にある村のことなんですけど」