心地良い秋の空気を肌に感じながら、仕事場に着いた私は店を開く支度をし始める。

「よし、準備完了っと。初日だけどお客様来るといいな」

***

 お店を開いてから3時間が経過した頃、店のドアに掛けられた鈴が鳴り、黒髪に白いワンピースを身に纏った一人の女性が店の中へと入って来る。

「いらっしゃいませ!」
「あの、今日、オープンだっていうチラシを見て来たんですけど」
「そうなのですね、ありがとうございます。では、こちらのお席へどうぞ」

 サリーナは横長のテーブルの前に置かれた椅子に座るように客の女性に促す。
 サリーナに促されて女性椅子に腰を下ろし、サリーナを見て口を開く。

「あの、もしかして私が初めてのお客ですかね?」
「ええ、初めてのお客様ですよ!」
「そうなんですね! あ、私の名前はエイヴァっていいます。今日はその、旦那のことで相談したいことがあって……」

 エイヴァと名乗った女性はサリーナに相談の内容を話し始めた。
 エイヴァの話しによると旦那と最近、些細な事で言い合いになってしまう。それが辛くて、旦那と言い合いにならないようにしたい。とのことであった。

「なるほど。まず旦那さんと言い合いにならないようにするには、エイヴァさん、貴方が冷静になって自分の気持ちを旦那さんに伝えられるようになればいいと私は思いますよ」
「冷静になって自分の気持ちを伝えるですか…… 確かに私、今までかっとなって冷静に旦那に気持ちを伝えられてなかった気がします」
「ええ、貴方が冷静なって旦那さんに気持ちを伝えられるようになればきっと言い合いになんてならないと思いますよ」

 サリーナにそう言われたエイヴァはサリーナの見て頷いてからそっと椅子から立ち上がる。

「話しを聞いてくださりありがとうございます。私、頑張ってみます……!」
「ええ、頑張ってください!」

エイヴァはサリーナに軽く会釈してから、店から出て行った。 
 サリーナはエイヴァの姿を見送った後、椅子に座り少し弾んだ声で呟く。

「やっぱりこの仕事はやり甲斐を感じるわ」

 その後もお客が何人か店に訪れた。その日の夜、サリーナは初日の仕事の疲れからか家に帰りやることをすませで自室の部屋に入りすぐにベットに倒れ込み爆睡したのであった。