「ありがとう。」

 微かに、声がする。

「君に会えて、よかった。」

 そんなこと言わないで。

「本当に、ありがとうございました。」

 まだ、会えるよね?



 +*+*+*+



 これは、夢だろうか。

 あなたの声がする。
 会いたい。会いたいよ。

 どこかに行ってしまうのに。
 まだ、あなたの声がする。

 まだ、会いたいよ。
 君が笑ってさ。



 +*+*+*+



「残り、一週間も生きられれば良いでしょう。」
  
 そう、告げたのは医師だった。
 ずっと、懸命に治療してくれた医師。

 彼に、秘密にできた一番の理由。


 もう、意味をなさないみたいだけど。


 窓の外の花は、ゆっくりと開き、しぼんでる。

 雨音も、叩きつける。

 少し、眩暈がした。


 +*+*+*+



 言わなきゃダメだなんて、とっくに知っている。

 どこかで、病気を話さないといけないってことも、知っている。

 それでも、やっぱり辛いの。


 +*+*+*+



 君の笑い声が、こだまする。

 くぐもって、はねるように。

 うるさい。
 そう、思ってしまった。

 助けてよ。この、私の影に光を差してよ。


 +*+*+*+


 腕に、あざが見える。
 少し、青くなったあざ。

 自然麻酔。痛みを伴わず死ぬためのものだ。

 これで、私が近く死ぬことがわかる。

 手に取るように、わかる。


 最後に、手紙を書こう。

 最期に。



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 00県00市 00区00町00-00
 日野 太陽様




 拝啓

 お手紙。拝読いたしました。

 あなたは、今。お元気でしょうか。

 無事、旅に出て目的地に着ければなと思います。

 一年後。また、会いに来ます。

 元気なあなたでなくとも、少しでも、お話ができればと思います。

 敬具

 00県00市 00区00町00-00

 日野 光留より