ちらりと窓の外を見る。窓の外には、はっきりとした三日月。

(今日は、きれいな夜空が見えるんだな)

 雲一つない夜空には、きらきらと星が瞬いている。でも、一番視線を引くのはやっぱり三日月だ。

 そう思いつつ、律哉(りつや)は久々に士官学校時代の同期たちと飲んでいた。

「いやぁ、それにしてもなんていうか。こうやって集まるの久々じゃね?」
「あぁ、そうだな。……士官学校を卒業してから、疎遠だったからな」

 集まったのは律哉を含め四人。士官学校時代、それぞれの分野で主席を治めてきた、いわば学年のエリートたち。

 その中でも律哉は特に成績優秀であり、それぞれの分野で一度は主席を治めている。合わせ、卒業時の成績も主席だった。

 ある意味エリート中のエリートであり、出世コースを約束された人物。しかも、美しい容姿を持つ彼を女性は放っておかない。……ただ、律哉は誰のことも相手にしなかった。

 だって、所詮自分は『一時期の遊び相手』にしかなれない。自分のような人間と本気で結婚を考える女性など、いるわけがないのだから。

 誰だって、沈むのがわかっている泥船になど、乗りたくない。

「というか、俺ら翌日休みじゃないと飲めないしな……」
「全く、軍人って楽じゃないよなぁ」

 けらけらと笑って言葉を交わす三人を一瞥し、律哉は小さくため息をついた。

 正直、飲み会などはごめんだ。でも、親しくしていた学生時代の同期だから。……なけなしの金を使ってでも、会おうと思ったのだ。

(これはケチなんじゃない。守銭奴という奴だ)

 それは都合よく言い換えたケチなんじゃないか……と、自分でも思う。が、そう思っていないとやっていられない。

 その一心で、律哉は目の前の酒を飲み干す。