３０．隧道新設工事　調査担当者の個人的記録


作成者：佐野
作成日：1964年9月30日
※本記録は私的な観察記録であり、正式な報告書ではありません。

異常事象に関する個人的見解

昨日提出した正式な事故報告書には記載できなかった事項について、後々の参考のため、個人的な記録として残しておく。

1. 不可解な環境変化について

- 測定機器の異常
坑道内の温度計が、一瞬で-10℃から40℃まで急変する現象を確認。通常の地熱や地下水では説明のつかない変動幅。さらに奇妙なことに、同じ場所に複数の温度計を設置しても、それぞれが全く異なる数値を示した。

2. 回収された証拠品に関する違和感

- 作業員のヘルメット
報告書には「噛み跡」と記載したが、実際の痕跡は上から下へと貫通するような圧迫痕。まるで巨大な重みで押しつぶされたような形状だが、ヘルメットの変形方向が物理法則に反している。

- 発見された足跡
地面に残された足跡は、進行方向に向かって徐々に深くなっていく。最後の足跡は20センチメートルほどの深さがあるが、その先には一切の痕跡がない。まるで作業員たちが地中に吸い込まれたかのようだ。

3. その他の違和感

- ムカデについて
発見された個体は近隣に生息している既知の種とは異なるようで、体長30センチメートル以上の個体も確認された。

- 佐伯監督の最後の無線
公式記録には「救助要請」となっているが、実際の内容は「上から覗いている」という意味不明な言葉の繰り返しだった。その後、笑い声のような音が混ざり、通信が途絶えた。

5. 個人的な推察

事故の背後には、我々の理解を超えた何かが存在するのではないか。地質調査の際に発見された古い石碑の文字が判読不能だったこと、工事開始直後から作業員たちが悪夢に悩まされていたという証言、そして現場で起きた一連の異常現象は、単なる偶然とは思えない。

なお、この記録は私の主観的な観察に基づくものであり、科学的な裏付けのない推測も含まれている。しかし、今後同様の事態が発生した際の参考として、あえて記録に残すことにした。

追記：
先ほど、佐伯監督の机から出てきた日誌には「それは眠っていた」という走り書きが残されていた。意味は不明だが、状況を考えると不穏な印象を受ける。また、その日誌を読んだ直後から、私の部屋でも微かな振動を感じるようになった。
この記録は今後、必要が生じた際のために金庫に保管することとする。

佐野
※この記録は部外秘として取り扱うこと。