ある没番組の供養に関するお知らせ

 当然ながら件の心霊番組はお蔵入りとなりました。
 関係者が軒並み死んだ状況で放送できるはずもありません。
 誰も呪われたくないので、番組そのものがタブー視されるようになりました。
 一時はニュースを騒がせた連続怪死も、時間の経過と共に忘れ去られていきました。
 長々と語ってきましたが、以上がお蔵入りの経緯です。

 結局、残されたのは私だけです。
 他の関係者は死んでしまいました。
 きっと想像を絶する苦痛を伴ったのでしょう。
 自室を徘徊する彼らの表情は、安穏とは程遠いものです。

 そうです。
 呪い殺された犠牲者は、霊となって私に憑いています。
 時折、何かを伝えようとしてきますが、その内容を理解することはできません。
 正確には……私が理解を拒んでいるのでしょうね。
 彼らのおぞましい形相を見れば、そうしたくなる気持ちも分かるはずです。
 到底、善意で接してきているとは思えない様子なのですから。
 未だに死なない私に文句でもぶつけているのだと思います。

 私は生きたい。
 彼らのように惨たらしい最期を迎えたくない。
 別にごく自然な感情でしょう。
 理不尽に呪い殺される結末など望むはずもありません。

 だから私は番組の収録データをネットにアップロードしました。
 あの心霊番組を不特定多数に拡散することで、呪いの影響力を薄めたのです。
 今、皆様が読んでいるこの文章もそういうことです。
 認知する人間が増えるほど、私に降りかかる呪いも弱まります。

 この方法を提案したのは燐源さんでした。
 死の間際、彼は私に助言したのです。
 私は半信半疑ながらも従い、こうしてまだ生きています。
 霊は憑いていますが、実害を受けたことはありません。
 弱まった呪いでは人間の命を奪えないのでしょう。

 説明の冒頭、私はこの文章について"ある種の供養"と表現しました。
 これはそのままの意味です。
 害を与えられないほど薄まった霊は、もはや消滅したのと同じでしょう。
 だから供養と称してもいいはずです。

 あなたは知ってしまいました。
 関わりが生まれた以上、呪いの影響下にあります。
 死にたくなければ、どうか広めてください。
 それが、認知したあなたの自衛に繋がるのです。

 巻き込んでしまい申し訳ありません。
 最後まで読んでくださりありがとうございました。
 どうかよろしくお願いします。






筆者の███さんは2023年の12月に逝去しました。