足りない。
なにもかも、足りない。
それは才能とか、やる気とか、努力とか、それらすべて含めた実力とか。
それは、自分の感じたことをまっすぐに愚直に実直に、言葉にぶつけて生み出す能力であったり。
それは、これまで見たことのないような想像を、明瞭に、期待感とともにこの世界に創り出す能力であったり。
それは、届かないと思っていても足掻いて藻掻いて、いつかそこに届けて少しでも強く美しく素晴らしい人間になる能力であったり。
それらすべてをきっと含んでそれでもなお言葉にしきれないような、複雑で多彩で、きっといつかという期待さえも打ち砕かれてしまうくらいの、ありとあらゆるものが足りない。
悔しい。
足りない事実を、届かない事実を、伸びしろだって捉えることなんてできない、そんな自分が嫌いで、そんな自分だからきっと満たされないという事実も嫌いだ。
どうしてこんな劣等感の海に落ちてしまった? どうして俺は、すべて足りない?
きっとこんなこと考えたって仕方ないだろう。でも諦められない。わかっていても諦められなくて、どれだけの時間が経っただろう。
十万を目指して一万に届かず、長編を書ければきっと、なんて思って、だましだましで続けてきた。
好きなんだから仕方ない。なんて自分に言い聞かせたって募る嫌悪と劣等に頭を痛め、こんなもの嫌いだって背を向けて、でも負けたくないって思いがまた顔を出す。
自己矛盾って言葉が一番似合うのに、自己矛盾って言葉だけじゃ表しきれない。
そんな感情を表すのだって、彼なら上手くやれたのかな。なんて思うばかりで自分はどうなの? って聞いてみたって、きっと無理なんだとしか言えなくて、実際に手を動かすことはない。
自分の言葉に自信がないから鍵括弧つけて他人に逃げる。喋ってるのは俺なんじゃなくてこの作品のこのキャラクター。
そう言ったって変わらなくて言いたいことを言わせるだけで、それを作品と呼べるのすら自分の中でも怪しくなって、それでも俺は作品と呼び、彼はきっとゴミだと呼ぶ。
その彼だって特別だってわけじゃなくって、顔も知らない他人の言葉に怯えて言葉を手放すだけ。
薄い言葉とかそれがゴミだとか些細な言葉が心に刺さって深い傷を作っていって、言葉のリズムを意識したって誰も気づかないなら自慰で。
「って、こんな言葉使ったら、受賞なんてするわけないか」
でももういいや、俺は受賞なんて半ば諦めてる。
わざわざ言ったら負け惜しみみたいで格好悪いけど。心の中ではいまだに少し期待しているけど。
結局、どうなんだろうな。受賞したらラッキーくらいに作品を出して、それでも賞を逃すと悲しくなる。やっぱり俺は自分の作品を愛してるんだろうか。どうして悲しくなるんだろうか。
それが当然の摂理なんだろうか? じゃあ俺はいつまで経ったってあきらめきれないんだろうか???
誰も教えてくれない。小説で飯を、なんて思ってたって、きっと無理だって理性が言ってて、それでもやっぱり夢見てしまう。賞の話となんら変わらない。変わりたいのかすらもわからない。
「結局、俺は泣けばいいの? 薄汚く笑えばいいの? どっちなんだい?」
教えてよ。誰か、誰か、教えてよ。
でもきっと、教わったって従えないだろう。
あなたは小説で生きていくことはできない、って未来予知者に言われたとして、きっと俺は小説という名のゴミを生み出すことは止めないだろう。
だから、あとしばらくだけはって自分に言い聞かせて、死ぬまで小説を書いていくんだろう。どんな人生になるのかは、わからないけど。
「あなたは小説で生きていくことはできない」
目の前の少女が、俺と同じような少女が、告げた。
相手は確かに俺だった。
「それは、わたしも」
意味深に告げて、俺の腕を掴んだ。
なにもかも、足りない。
それは才能とか、やる気とか、努力とか、それらすべて含めた実力とか。
それは、自分の感じたことをまっすぐに愚直に実直に、言葉にぶつけて生み出す能力であったり。
それは、これまで見たことのないような想像を、明瞭に、期待感とともにこの世界に創り出す能力であったり。
それは、届かないと思っていても足掻いて藻掻いて、いつかそこに届けて少しでも強く美しく素晴らしい人間になる能力であったり。
それらすべてをきっと含んでそれでもなお言葉にしきれないような、複雑で多彩で、きっといつかという期待さえも打ち砕かれてしまうくらいの、ありとあらゆるものが足りない。
悔しい。
足りない事実を、届かない事実を、伸びしろだって捉えることなんてできない、そんな自分が嫌いで、そんな自分だからきっと満たされないという事実も嫌いだ。
どうしてこんな劣等感の海に落ちてしまった? どうして俺は、すべて足りない?
きっとこんなこと考えたって仕方ないだろう。でも諦められない。わかっていても諦められなくて、どれだけの時間が経っただろう。
十万を目指して一万に届かず、長編を書ければきっと、なんて思って、だましだましで続けてきた。
好きなんだから仕方ない。なんて自分に言い聞かせたって募る嫌悪と劣等に頭を痛め、こんなもの嫌いだって背を向けて、でも負けたくないって思いがまた顔を出す。
自己矛盾って言葉が一番似合うのに、自己矛盾って言葉だけじゃ表しきれない。
そんな感情を表すのだって、彼なら上手くやれたのかな。なんて思うばかりで自分はどうなの? って聞いてみたって、きっと無理なんだとしか言えなくて、実際に手を動かすことはない。
自分の言葉に自信がないから鍵括弧つけて他人に逃げる。喋ってるのは俺なんじゃなくてこの作品のこのキャラクター。
そう言ったって変わらなくて言いたいことを言わせるだけで、それを作品と呼べるのすら自分の中でも怪しくなって、それでも俺は作品と呼び、彼はきっとゴミだと呼ぶ。
その彼だって特別だってわけじゃなくって、顔も知らない他人の言葉に怯えて言葉を手放すだけ。
薄い言葉とかそれがゴミだとか些細な言葉が心に刺さって深い傷を作っていって、言葉のリズムを意識したって誰も気づかないなら自慰で。
「って、こんな言葉使ったら、受賞なんてするわけないか」
でももういいや、俺は受賞なんて半ば諦めてる。
わざわざ言ったら負け惜しみみたいで格好悪いけど。心の中ではいまだに少し期待しているけど。
結局、どうなんだろうな。受賞したらラッキーくらいに作品を出して、それでも賞を逃すと悲しくなる。やっぱり俺は自分の作品を愛してるんだろうか。どうして悲しくなるんだろうか。
それが当然の摂理なんだろうか? じゃあ俺はいつまで経ったってあきらめきれないんだろうか???
誰も教えてくれない。小説で飯を、なんて思ってたって、きっと無理だって理性が言ってて、それでもやっぱり夢見てしまう。賞の話となんら変わらない。変わりたいのかすらもわからない。
「結局、俺は泣けばいいの? 薄汚く笑えばいいの? どっちなんだい?」
教えてよ。誰か、誰か、教えてよ。
でもきっと、教わったって従えないだろう。
あなたは小説で生きていくことはできない、って未来予知者に言われたとして、きっと俺は小説という名のゴミを生み出すことは止めないだろう。
だから、あとしばらくだけはって自分に言い聞かせて、死ぬまで小説を書いていくんだろう。どんな人生になるのかは、わからないけど。
「あなたは小説で生きていくことはできない」
目の前の少女が、俺と同じような少女が、告げた。
相手は確かに俺だった。
「それは、わたしも」
意味深に告げて、俺の腕を掴んだ。