進んだ先の、少しだけ広い部屋には男女が集められていた。灯りはあいかわらず古臭い豆電球で、無機質な部屋は変わりない。

 ざっくりと僕を含め、合計で6人だ。

 まずは茶色のインバネス・コートと鹿討ち帽をきた服装の男『探偵』、金髪に鼻と口にピアスをつけたTシャツの『チャラ男』、メガネにスーツ、シャツは一番上のボタンまできっちり留めている『神経質』、なぜか白いタンクトップの『体育会系』、ワンピースをきている唯一の女性である『紅一点』だ。

 なかなか豊富な選定だ。

「やっと起きたのか、モブくん」

 探偵が僕をみるなり口を開いた。
 どうやら、先ほど僕がつけられたあだ名を知っているらしい。

「あのモニターで、君とピエロ野郎との会話をきいてたからな」

 僕の考えを読んだように、巨大なモニターを見やり、探偵はさらに続けた。

「君や僕の首についている金属製のリングがあるだろう? それは3日後に自動的に爆発する。恐ろしいことに、首が飛んで即死するんだ。生き残る方法はただ1つ、殺し合いをすること。最後の一人になれば自動的にリングが解除されて外れるらしい。この部屋の扉から屋外に出られるらしくて、助かるそうだ」

 その言葉に、僕はピンときた。

「……助かる、って。ピエロ男のいうことを信用するんですか?」
「どのみち、信じないとダメだろうな。下手に行動すれば、死ぬ可能性の方が高いだろうし」
 
「そ、そんな……!」

 このまま放っておけば、3日後にあっさりと即死できるだって……!?
 それなら、別にこのまま殺し合いなんてせずに、正座して待っていればいいじゃないか……!

「そういう反応するよな。同感だ……殺し合い、なんて……すべきじゃない」
 
 神経質が僕の肩を叩いた。
 そうだ、そんなことをしなくても良い。必要性がない。 
 
 いや、待てよ。
 取り外そうとしたらどうなるんだろうか。
 即死するのであれば、いますぐ外すという手も――

「ちなみに、外そうとするとリングから毒針が出て、のたうち回って死ぬ」

 僕の思考を読んだように、探偵はいった。
 ……それならば、リングを外しちゃいけないな。
 うん、即死がいい、即死が。

「でもほら、デスゲームそのものが嘘かもしれませんし、このまま3日なにもせず待ってみてはどうでしょう?」
「……そういって、だまし討ちでもしそうだな。お前みたいなやつが一番油断ならないんだよな! さっそく殺されたいのか、お前?」
 
 チャラ男がそういって唾をはきかけながら、僕の胸倉をつかんできた。

「……いま、なんていった?」

 思わず胸倉をつかむ手をギリ、と力の限り握り返した。
 さっそく、殺されるチャンスが巡ってきた、だと……?

「……殺す、っていったのか? 僕を? いいな、それならぜひとも殺してみろよ。当然ながら一撃で即死させてくれるんだろうな? いいか、中途半端に殺そうとするなよ? 確実に殺すつもりで全力でくるんだろうな?」

「な……」

 チャラ男の顔は真っ青になった。
 やはりコイツは覚悟が足りないらしい……。
 思わずチャラ男を突き飛ばすと、チャラ男はよろけ、尻もちをついた。
 
「チッ、この野郎……見た目だけかよ! 殺すつもりもないくせに、僕を殺すっていったのか? マジでぶっ殺すぞ……!」

 ――期待させやがって、こん畜生!
 チャラ男を一瞥し、吐き捨てるように続けた。

「僕は毎日、生きるか死ぬかの瀬戸際で……生きているんだ。次はふざけたことをいってないで、殺すつもりで本気でかかってこい。中途半端に殺そうとするなら、僕がお前をぶっ殺してやるからな……!」

 チャラ男はとうとう、涙目をとおりこして、泣き出してしまった。

「お、お前……な、何者なんだ……!? ただのモブ男じゃないのかよォ……?」

 当たり前だ。
 毎日、死ぬことだけを考えているからな。
 まったく。これだから素人は困るんだ。

 僕たちがそういって楽しく語り合っていると、モニターにピエロ男が現れた。