どこもかしこもクリスマスで色めいて、なんどきもクリスマスソングが流れてる。

 キラキラ、やたらと眩しすぎるし、鈴の音も、うるさくて耳を塞ぎたくなる。

 クリスマスを迎えられたら……嬉しい、けど。

 梶くんの期限が切れるようで……怖い。

 ダメだ、怖い……怖すぎる……。

 早く、ここから逃げ出したいっ。

 気持ちと一緒に早足になって……そのうち、いつの間にか走り出している。


 1秒でも長く、梶くんのそばにいたい!

 ひたすらに病院を目指す。

 愚かな姿だ。余裕なんて全然ない。

 梶くんに触れていないと、生きたここちがしない……。


 息を整えながら、梶くんの部屋に入れば、変わらずベットに横たわる姿がある。

「梶くん、今晩は」

 その寝顔にむかって、あいさつをする。


―― 凜! 外寒くなかった? ――


 けれど、返事はない。

「ごめん。手冷たいけど……」

 梶くんの手を握りしめて、体温を確認する。

 ……うん。あったかい。

 その次はベットに顔を伏せ、梶くんの胸に耳を近づける。


・・・・・・トク トク トク。


 あぁ、鼓動が聞こえる。

 梶くんの生きる音だ―――。

 やっと私も心が温まる。

 このパターンを続けて、たぶん……
 今日で6日目だと思う。

―― 俺も おんなじ ――

 確かにあのとき、梶くんのかすかな声を聞きとった。

 それ以来、もう―――
 今は声を聞いていない。

 時折感じた、手を動かす力も、もう……ぴくりともしない。

 握りしめた梶くんの手は体温が低いのか、寒い外から来たばかりの私が、冷たいと思ってしまう。

 梶くんの重たい腕を、私の肩に回した。

 少しでも私の体温を分けてあげたい……

 梶くんの腕の中に、私は自らおさまる。

 お互いのぬくもりを、少しでも伝え合えたら――。

 それしか、それだけしか……

 もう、できることが、ない。

「梶くん、外は寒いよ……もう手袋をしなくちゃ」

 私の声は届いているのかな……?
 もう一度、梶くんの声が聞きたいな……。

トク トク トク・・・・・・

 こうして、静かに、私達はこの世界で生きている―――。