「う……」
頭が重く身体がだるい……優笑は気怠さのなか目覚めた。
事件から痛む頭を押さえながら優笑は肌寒さも感じた。
シーツもかかっていない。ベッドの感触はなく硬さと冷たさが背中から伝わってくる。
「え……?」
目を開けると、見たこともない天井は病院のそれより、もっともっと高い……。
まるで体育館のようなライトが見えた。
「なに……?」
ゆっくりと起き上がると、傍に優楽が眠っていた。
「優楽……!」
そしてその奥にも、その横にも少女達が眠っているのに気付く。
ゾクリとした。
眠ったまま、無造作に床に置かれたような状況だ。
死体が散乱しているようにも見えた。
「ん……優笑ちゃん……? ……なに?」
死んだように眠っていたので、優楽が目を覚ましホッとする。
二人で手を握り合う。
「なんだよ!? これはぁ!」
「一体なんなの?」
「きゃーいやぁ!」
「怖い……」
「看護師さん! 此処はどこなの!?」
起きた少女達が異変に気付いて騒ぎ出す。
見渡すと学校の体育館の半分程度の部屋だ。
両開きの入り口が1つだけ見えた。
「ふざけんな! 開けろ!」
一番大騒ぎしている女生徒。
金髪に近いウェーブのロングヘアが、怒鳴り声と共に揺れている。
「あれ、真莉愛……?」
「うっそ、狂犬の真莉愛じゃん」
女生徒同士の話が聞こえた。
鬼頭真莉愛。
学院の高等部三年生。
知らない者はいない、有名人だ。
ギャルと不良の中間のような問題児。
目鼻立ちがハッキリしており背も高く、体つきも筋肉質で迫力がある。
しかし彼女のような問題児ほど学院での教育が必要、と学院長は退学にはしなかった。
「開けろー!」
「開けろっていってんだろ! コラ!」
真莉愛の手下と言われている二人も同じように叫びドアを蹴り上げている。
『ゴキゲンヨウ・吸血鬼ノ姫ニナル幼虫達ヨ……さぁ静かにしてください』
「な、なに……!?」
ボイスチェンジャーを通したような声がホールに響く。
何を言われたのか全く理解できなかった。
優楽が優笑に抱きつき、優笑も怯えて抱きしめあう。
「あ、あれ見て……!」
天井が近い壁に巨大なモニターが設置され、そこに映像が映し出された。
安っぽい吸血鬼のコスプレマスクをした人物が白衣を着ている姿。
女生徒達の悲鳴が上がる。
『落ち着いて、騒がずに……聞いてください』
一体何が始まるのかと、ザワザワと皆が喋りだす。
「優笑ちゃん……なにこれ」
「わかんない……これから親が迎えに来るとか……違うかな」
混乱する頭で都合の良いように考える。
きっとそうだ。
小学校の時とか、体育館に集まって保護者が来た人から帰るとか……そういうのに違いない。
そう、に違いない……と敢えて楽観的に脳みそを動かす。
……そうではない事を、直感的に感じているから。
『貴女たちは国の宝です』
何を言っているんだろうか。
全てがおかしい、怖い。
『なので貴女たちにはこれから、一人になるまで殺し合うデス・ゲームをしてもらいます』
シーン……とホールが静まり返った。
【生存者:32名】