要領良く社交辞令的に口先だけ気持ちの良いことをいってるだけの人間たちに日々もまれているだけに、彼女のそうした振る舞いが僕の心を鷲掴みにした。
 自分と同じ義理を重んじる態度に、このとき、心でつながれる数少ない相手だと彼女を認識したのである。

 プレゼントのお返しをするという約束をしたわけでもないから、なおさらだったろう。
 その半年後、僕はさらにお返しのつもりで彼女に誕生日プレゼントを渡した。
 実はチョコレートが好きだったと聞き出していたので、出張先にあった高級チョコレート店で見つけていたものだった。

 あまり気を遣わせたくなかったのと、自分の想いを気取られなくないのとで、やはり小ぶりだったけど、これが彼女に響くようなら僕らはそういう男女の仲として接近していけたらという願いを込めていた。