何故こんなことに……。

目の前に座る柊。
テーブルに置かれた甘味。

ひな乃はそれらを交互に見た。

「話をしよう」

そう言われたはずだったのに……。
綺麗で美味しそうな甘味を出され、ひな乃は混乱していた。

これではいつもの試食会と変わらない。

「あ、あの……これは?」

ひな乃がおずおずと尋ねると、柊はゆったりとお茶を飲みながら「食べてくれ」とひな乃にも食べるように促した。

「話をするには甘味が必要だろう? 今日のは自信作だ。ここの看板メニューになるものを考えている」
「看板メニュー? 確かに今までの甘味とは少し雰囲気が違いますね」

甘味は四角い寒天のようだが、深い青色で着色されている。まるで夜のような色合いだ。
中にはキラキラしたものが入っており、夜空のように見える。

「まるで星が輝いているみたい……。お店にぴったりだと思います! プルプルでとても美味しそうです。見る角度で景色が変わるので、星が瞬いているみたいですよ!」

いつものように感想を言ってしまう。
そしていつものように、一口食べては感想を言ってしまうのだった。

「今日の甘味もすごく美味しかったです! ……あっ」

話があるのだったと思い出したのは、甘味をペロリと食べ終えた後だった。



「呪いについて話すんだったな」

柊の言葉にひな乃の背筋が伸びる。

「八久雲の屋敷に送られてきた毒を飲んだだろう? あれはただの毒ではない。俺の心臓の一部なんだ」
「し、心臓? 柊様の?」
「あぁ、口にすれば猛毒となるが……送った奴もまさか飲み込んだとは思うまいよ」

甘味を食べてる最中に聞かなくて良かった。
思わぬ話にむせ返ってしまうところだった。

あの銀色のキラキラと輝いていたのが……?
柊様のお身体の一部なの……?

申し訳なさがこみ上げてくる。

「あれは代々月守家が守ってきたものだ。本来あれは、俺と月守家の契約の証だったんだ」
「月守家……? 私の家?」

それはひな乃にとって初めて聞く話ばかりたった。