呪いのブルーダイヤの最初の犠牲者は果たして誰だったのか?
 宝石鑑定士Aとする説は確かに有力だが異論もある。
 A氏の被害は同業者のBによって毒物を摂取させられたためであり、呪いのような常識を外れた力によるものではないとの説があるんだ。
 しかし本当に毒物が使用されたか否か決定的な証拠はなく、また仮に現実的な毒物が用いられていたとしてもBがそのような犯行に走ったのは呪いに操られたせいではないかとの説もある。

 ん? どうした? もしかしてこの話を聞くのは初めてだったか?
 いや、すまない。馬鹿にするなんてとんでもない。
 こんなのそもそも知ってるほうがおかしいんだ。私の態度こそが間違ってたよ。

 ええと、まずね。
 サン・ジェルマン・ルルイエ伯爵が当時六歳のパトリシア・ピークスにブルーダイヤの指輪を贈り、伯爵自身はその日のうちに姿を消した。
 ほどなくしてパトリシアの父親のトーマス・ピークス氏は娘の指輪の鑑定をA氏に依頼。
 ところがA氏は突然の食中毒に倒れ、Bが代理としてピークス氏のもとを訪れる。
 ……のちにA氏はBとは面識があるという程度で仕事の代理を頼むような間柄ではなく、また当日は医者を呼ぶので精一杯で誰がBと連絡を取ったのかわからないと語った。

 Bはパトリシアの指輪をガラス玉と鑑定。
 その翌日、Bは自宅に押し入った強盗によって殺害された。
 よってBこそが呪いの最初の犠牲者だとする説もあり、A氏を一人目とする説と意見を二分しているわけだ。

 強盗殺人事件の捜査の過程で、Bが鑑定のために預かった宝石を贋物とすり替えて騙し取るという手口を繰り返し行なっていたことが判明。
 Bの自宅から発見された複数の宝飾品の中にパトリシアの指輪も含まれていた。
 それにしたってなぜこうも都合よくブルーダイヤなんていう珍しい宝石の贋物をすぐに用意できたのか、さらなる裏がありそうだよね。

 押収された宝石類は証拠として警察が保管。
 警察によって改めて鑑定された結果、パトリシアの指輪はダイヤモンドではなく、その他の宝石とされるいかなる石とも異なるとされた。

 ピークス氏は指輪がただのおもちゃだと判断し、安心してパトリシアに返還。
 なお、それまでの間、警察署内ではラップ音などの心霊現象が絶えなかったとされている。