キャロライン・ルルイエの消息

 牧師さまはルイーザのおかげでヘンリーさんとヘンリエッタさんのお墓に名前が書けるって喜んでらしたわ。
 わたしも一応はお祈りをしておいたわよ。
 ヘンリーさんとヘンリエッタさん。
 こんな呼びかた他人行儀かしら?
 だってこの二人はわたしの本当の祖父と祖母ってことになるのよね?
 でもまだルイーザの言葉を信じる気になれなくて。
 パトリシアおばあちゃまにはあまりかわいがってもらった記憶はないけれど、それでもやっぱりショックだわ。

 牧師さまは子供に聞かせるような話じゃないっておっしゃってた。
 わたしが実家を出て学校の寮に入ったのは九歳のとき。
 ルイーザだって同じ九歳なのに。
 パトリシアおばあちゃまはどうしてパパのことを、ルイーザには話してわたしには話さなかったの?

 わたしが聞かされてきた話では、パパはおじいちゃまとおばあちゃまの新婚旅行の最中にアメリカで生まれた。
 パパは大人になってから何度もアーカムに来て、自分が生まれた産院を捜したけれど突き止められなかった。
 それは生まれた場所がそもそもアーカムではなかったから。

 パパはパトリシアおばあちゃまの子供ではない。
 わたしはパトリシアおばあちゃまの孫ではない。
 それじゃあルイーザは?

 髪の色が白髪になる前のパトリシアおばあちゃまにそっくりだっていうのはただの偶然?
 だから実の孫じゃなくてもかわいがっていたのかも。
 ルイーザがパトリシアおばあちゃまが生んだ子供だなんてウワサ、本当なわけないわよね?



 話を戻すわね。
 ルイーザが言うにはね、白骨化したこの首をこの状態で首なし騎士に返しても意味がないんですって。
 で、このまま持っていくっていうのよ。
 人間の頭蓋骨を。
 ルイーザってば「子供が持っていれば誰にも本物だとは思われない」なんて言って。
 本当に大丈夫かしら?

 それからルイーザは頭蓋骨の入った箱を肌身離さず。
 今も食堂車まで大事に抱えて持っていっているわ。
 最初に書いたとおり、この手紙は汽車の中でしたためているわけで。
 ほかの乗客にバレたら大変よ。
 イギリスに戻る前に首なし騎士に首を返せるといいんだけど。

 書き忘れてたけどわたしたち、ニューヨークに向かっているわけじゃないのよ。