1930年8月26日

A紙の記事
『女性二人死亡。事故か事件か?』
 8月25日午後2時頃、ルルイエ家の執事が警察に通報。
 駆けつけた警察官がこの家に住むパトリシア・ルルイエ夫人と身元不明の中年女性が倒れているのを発見。両者の死亡が確認された。
 警察では事件・事故の両面から捜査を進め、死亡したパトリシアさんの息子のヘンリー・ルルイエ氏から事情を聴いている。


B紙の記事
『相次ぐ謎の死 ブルーダイヤの呪い』
 かねてから触れた者に死をもたらすと(ささや)かれ続けてきたルルイエ家の青いダイヤモンドが九年に渉る沈黙を破り、ついに新たな死者を出した。
 亡くなったのはブルーダイヤの所有者であるパトリシア・ルルイエ夫人と、ダイヤモンドにかけられた呪いを解くために屋敷へ招かれた霊媒師の女性である。
 恐るべき悪霊の呪いは何者にも止められないのであろうか。


C紙の記事
『ブルーダイヤの呪い ついに主の老貴婦人に!』
 貴兄らもご存知であろう、所有者が変わる度に新たな所有者を呪い殺して元の主のもとへ戻ることで有名なブルーダイヤの毒牙が、今回ついに主たる老貴婦人、パトリシア・ルルイエに襲いかかった。
 しかもその際、ブルーダイヤに取り憑いた悪魔に敢然と立ち向かった勇気あるエクソシストまでもが悪魔の返り討ちに遭い、命を落としたのである。
 ブルーダイヤの主の地位はパトリシアの孫のルイーザ・ルルイエに受け継がれるという。
 わずか九歳の少女の人生はこれからどれほど過酷な運命にもてあそばれることになるのであろうか。
 記者はこれからも見守っていく所存である。