空と栞が子どもを諦めてから、1年が経った…



2人は報道で、不妊治療の保険適用が始まったと知った。

2人は顔を見合わせて…



「これって…前より費用は少なくて治療が出来るってことじゃない?」



「そういうことだよね?」



「また挑戦できるかも?」



「でも、舞は負担じゃない?」



「私は、全然大丈夫だよ…空は?」



「俺も、全然大丈夫!」



そして、再び治療に通うことにした。



それから、スケジュールに従って治療をしていく。



一度は諦めた子どもだった。

仕事を休まなければいけなかったり、周りにも迷惑をかけることもある。

それでも…本当は子どもが欲しかった。



人工授精を3回行ったけど妊娠に至らなかった…

その度に、舞は落ち込んだ…

俺も、正直色々な面でしんどさを感じていた。



その後、国からの助成も行われるようになって…

更に負担も少なくなった。



そして、人工授精5回目にして…

やっと、妊娠に成功した。

舞は、泣いて喜んだ…

空の両親も、諦めていたらしく…

喜んでくれた。

舞の両親も喜んだけど、特にお義母さんが泣いて喜んだそうだ…



あとは、この子が無事に育って生まれて来てくれるかだ…



安定期も過ぎ…

舞の顔も、どんどん穏やかになっていった。



お腹の子どもが動いたと喜ぶ舞の顔を見ると…

俺も幸せだった。

舞のお腹に手を当てると…

本当に動いている。



俺たちの子が、ここにいる。

毎日、目が覚める度に夢ではないかと思って…

でも、起きると…

大きなお腹をした舞がいる。

その度、俺は幸せだと実感した。



そして、予定日を2日過ぎた日…



陣痛が始まった…

俺は、心配で仕事を休んだ…



「今日生まれるかも分からないのに…」



って、舞は笑っていたけど…



誕生する瞬間に、傍にいられなくても病院にはいたかった。



舞のお義母さんに家に来てもらった。



陣痛の時間が、どんどん短くなる。



お義母さんが時間を計って…



「空くん、そろそろ病院に電話して、病院に行こう」



俺は、慌てて病院に電話をして…

車を走らせた。



最初は、病室にいたけど…

更に、陣痛の時間が短くなったから



分娩室に移動した。



お義母さんが、舞と一緒に分娩室に入った…



俺は、外で待っていた。



母さんに、舞が分娩室に入ったと連絡したら

飛んで来た…

2人で、待合室で待った…



「母さん、舞は大丈夫かな?」



「先生がいるから大丈夫だよ」



そして、数時間後…



子どもの泣き声が聞こえた…



「生まれた…」



子どもは、女の子だった。



初めて、その子を見た時…

俺は気が付くと…泣いていた。





   *****





舞は、子どもの顔を見られて…

そして、泣いている空を見て…

本当に幸せだと思った…



これまで、色々あった…



初恋を諦めて…

でも、空と再会できた。

そして、想いが通じて…

結婚することもできた。



でも、人生はそんなにうまくいかなくて…

子どもができない苦しみを与えられた…



でも、それを乗り越えて…

私たちは、ここにいる。



私の初恋は、実らなかったはずだった…

神様…それなのに、実らせて下さって本当にありがとうございます。



どうして実ったのか気にはなるけど…



あれは、やっぱり夢だったのかもしれない。



こうして、空と子どもと生きていける現実がある。

初めての子育ては、大変だったけど…

楽しいこともいっぱいだった…





それから、2人は話し合い…

治療を続け…

2年後に、2人目の子どもを授かった…

そして、男の子が生まれた…





2人はさらに幸せに包まれていた…







これが、空と舞の物語だ…







でも、それを上から眺めて微笑んでいる男がいた…