舞は、合コンの席に着いて…

驚いた…



空に似ていると思った、その男の人は

間違いなく…空だった。

空と会うのは、何年ぶりだろうか?

中3の夏以来だから、8年ぶりだ…



少し、大人びた彼は…やっぱり空だった。



1人ずつ、自己紹介をしていく。



「徳島空です。22歳です。病院の事務室で働いています」



彼が、発するその声は…舞が覚えている空の声だった。



どうして…

こんな所で会うなんて…

私の、初恋は実らないと言われた。

それなのに、また私は苦しい思いをしなければいけないの?



だいたい、栞はどうしたの?

なぜ、ここにいるの?



舞は、胸がドキドキするのを抑えることが出来ず…

パニックになっていた。



自分の番がきて…

ドキドキしながら…



「藤本舞です。23歳です。アパレルで働いています」



空は気付くかな…



その瞬間…



「え⁉藤本?中学の同級生だったよね?」



そう、空が言った…



「うん…。気が付いてくれたんだね…」



「久しぶりー!」



2人は同時に、そう叫んだ。



「あれ?2人は知り合いだったんだね。それも偶然って感じ…。席変わる?」



舞の前に座るその人が、そう言って…



「空、こっち来いよ」



空が立ち上がって…

舞の席に向かって歩いてきた。



空は、少し足を引きずりながら歩いてきた…



それを見て…

改めて、病気の重さを知った…



「藤本、大人っぽくなっていて最初分からなかったよ」



「私も、似てるなって思ったけど…確信なくて…名前を聞いて驚いたよ」



「会うの何年振りかな?」



「中学の夏休み前からだから…8年ぶりくらいじゃない?」



「あ……俺が入院して学校に行けなくなったからな…」



「そうだね……病気はもういいの?」



「うん、今のところ大丈夫だよ。足はこの状態だけどな…」



「あの時は、本当にびっくりしたよ。でも元気そうで本当に良かった…」



「ありがとう」



それから、仕事の話とか…最近の話をした。



舞は、空と喋りながら…



本当に聞きたいのは、こんなことじゃない…

私が聞きたいことは、栞のことだ…



栞はどうしたの?

なんで、ここにいるの?



もしかしたら、付き合いでここにいるのかもしれない…



そう考えていたら、他の男の人が



「お前達、久々の再会を楽しんでいるところ悪いが…席替えをしたいんだけど…」



「あー、ごめんごめん。藤本また後で…」



「うん……また後ね」



それから、他の人と話したことなんて…

ほとんど、覚えていない…



舞の心の中は、すぐ近くにいる空のことで…いっぱいだった。

胸がドキドキして…同時に苦しくて…



ついつい…空を見てしまう。

そして時々、空は舞を見て微笑んだ…



あの優しい眼差しは、昔と一緒だ…



もし、頼まれて来ただけなら…

また、栞との話を聞かされて…苦しい思いをするのかも…

神様は、本当に残酷だな…



そんなことばかり考えていたら…

いつの間にか、お開きになっていた。

みんなの後ろに付いて、店の外に出た…



舞は、空の連絡先を聞こうか…どうしようか…

ずっと、迷っていた。



すると…

空が近づいてきて



「藤本、あまり話せなかったし連絡先交換しようよ」



「うん。いいよ…」



「また、ゆっくり会おうよ。いい?」



「うん、全然いいよ…」



そう、約束して…空と別れた…