あなたの隣にいてもいいですか…〜最後まで幸せと笑顔をありがとう〜

信也の職場、美容室(きらり)でイメチェンをした日の夜、帰宅してきた信也から嬉しい報告を受けた。

仕事終了後に、例のホームパーティーの話をしたという。
すると、お店がお休みの月曜日、偶然にもスタッフ全員が予定もなくフリーだったのだ。

「だからさ、次のお店がお休みの日…えぇ~と、四日後かな?…皆んなを呼んで、ホームパーティーしよう!」

「ほんとに?!ほんとに皆んな来てくれるの?!」

「おぅ!ほんとにほんと!たまたまだけど、皆んな予定空いててね」

「やったぁ~!!じゃ、早速お料理のメニューとか考えなきゃ!あっ…明日、お義母さんは買い物とか一緒に行けるかな?…」

「おぃおぃ…そんなにはしゃぐなw…母さんには俺から電話しといてやるから、まーちゃんはご両親に連絡したら?まぁ…もしかしたら、もう知ってるかもだけど…?母さんのことだからあの後、話しした可能性なくもないしね…w」

嬉しそうに興奮気味に無邪気にはしゃぐ真理を、落ち着かせるように信也は言った。

その後、輝美への連絡と真理の両親への連絡を済ませ、着々とホームパーティーへの準備が進んでいった。

そして待ちにまったパーティー当日…

朝から真理はバタバタと大張り切りだった。
そんな真理を愛おしそうにも心配そうにも、複雑な気持ちで信也は見守っていた。

「あの…まーちゃん、嬉しいのはわかるんだけど…体調、無理しないようにね…俺も手伝うし、もうすぐ母さん達も来るはずだし…」

そんな信也の言葉も聞くか聞かずか、真理はニコニコと笑顔で返答してきた。

「大丈夫よぉ〜、しん君心配しすぎ…体力回復のためにも適度の運動は必要、て先生からも言われてるし…それに今日はね、なんだか調子もいいんだぁ」

退院してあれから約二週間ほどたったわけだが…

確かに出血はほとんど落ち着いてきた…頻尿はまだ微妙だが、疲労感的な体のダルさも掃除や洗濯、料理などの家事、買い物など少しくらいの外出はできるほどまでは回復していた。

「いゃ…でもさ…まだ、完全なわけではないわけだし…」

「…ほんと、心配性よねぇ…どんだけ過保護なんだか…」

そんなやり取りをしていると…

ピンポォ〜〜ン♪♫♪…

玄関のチャイムが鳴り、輝美と真理の両親が到着した。

「信也、真理ちゃん、おはようっ!」

相変わらずの元気で明るい挨拶をしながら、輝美がリビングに入ってきた。
そしてその後ろに続くように、真理の両親も入ってきた。

「おはよぅ、真理…体調はどうだ?」

「おはよぅ、パパ…いらっしゃい…だいぶ落ち着いてきたよ…それより、今日はお仕事お休みなの?」

真理の姿を見て早々、心配そうに訪ねる真司に答えながら、真理は質問返しした。

「違うのよぉ〜w…実はねこの人、あなたから連絡きてすぐ職場に電話してね、急きょ休み入れたのよw」

真理と真司のやり取りを聞いていた弥生は、少し照れ臭そうにモジモジとしている旦那を横目に、ちょっとからかうような口調で代わりに返答した。

「そうなんだ…わざわざありがとぅ…」

「…おぅ…」

真理の無邪気な笑顔に、真司はまたもや照れ臭そうに頷いた。

そんな二人の横で、弥生と輝美は持ってきた手土産を袋から出しながら、顔を見合わせて笑っていた。

そうこうしながら真理を中心に、輝美と弥生の三人で料理は着々と出来上がっていった。

信也と真司の男性陣はというと、玄関や部屋の片付けや掃除、テーブルセッティング等など、気がつけば女性陣の指示のもと顎で使われていた。

そしてあれやこれやと準備が進み、気がつくと時間は皆んなを招く予定の時間が近づいていた。

…さぁ〜!ホームパーティー開始!!

招いたお店のスタッフ達も次々と到着し、全員揃ったため予定していた時間より少し早めだったが、パーティーは始まった。

「皆んな今日は、来てくれてありがとぅ…たまには仕事以外でこうやって交流するのも、悪くないんじゃないかなぁ…て、思ってます…では、楽しんでいってください…乾杯!」

信也のちょっとだけ堅っ苦しい挨拶と乾杯で、皆んなそれぞれ持っていたグラスを掲げ、楽しく飲み始めた。

「はぁ~〜ぁ…明るいうちから飲めるなんて、幸せっすねぇ」

「ほんと…いつもよりうまく感じるよなぁw」

「そうねぇ…たまにはこういうのも悪くないわね…」

高梨凛斗(たかなしりんと)、岡山敦(おかやまあつし)、織部夏姫(おりべなつき)…

りんりん、アッシー、織姫…などという愛称で呼ばれている三人が、完全にリラックス状態になっていた。

その近くをいそいそと動き回る、子猫のような女の子…

相葉桃華(あいばももか)、愛称ももちゃん。
入って一年のまだアシスタントの彼女は、先輩達のお世話であっちら行きこっちら行きと、こまめに動き回っていた。

「りんりん先輩、先輩の好きなお肉料理、持ってきました…あっ、アッシー先輩もおかわりのビール、どうぞ…」

「おっ!サンキュ!肉、いいねぇ…」

「料理も美味いけど、やっぱビールがいいなぁ…」

そんな桃華の健気な行動を見ていた夏姫は、少しだけ姉さん風をふかせた。

「もも…今日は仕事じゃないんだから、先輩とか関係なくあんたもちゃんと楽しみなよ…」

その言葉を聞いた信也も、同意するように頷きながら笑顔で言った。

「そうだぞ、もも…今日はうちの奥さんの我儘イベントだけど…せっかくなんだから、楽しんでいけよな…」

そこまで言うと、男同士で陽気に飲んでる凛斗と敦のほうを向いて一言付け加えた。

「て、いうか…お前らも自分の物は自分で持ってこい」

少し眉をピクつかせながら信也は言った。

「あぁ~…すんません…ももちゃんも悪かったな…」

「だな…気がつかんくて、ごめんな…」

頬を薄くピンク色にし少しほろ酔い状態になっていた二人だったが、そのうえに更に顔を赤らめ恥ずかしそうに言った。

「いゃいゃ…そんな先輩達、気にしないでください…私は自分の意思でやってただけですから…」

凛斗と敦からの言葉に、逆に申し訳なさそうに少し戸惑うような感じで桃華は苦笑いしながら言った。

「はぃはぃ…今日は皆んなで楽しく過ごすための集まりなんだから…辛気臭くするのはご法度(ごはっと)よ」

様子を見ていた輝美が、ナイスタイミングで仲介に入った。
おかげで一瞬ながらも空気の悪くなったその場が、ひと風吹いたようにフワァッ…と変わった。

「そうよぉ…今日は立場とか年齢とか関係なく、食べて飲んでお喋りして楽しく過ごす日なのよ…変な空気にしちゃだめよぉ」

両親と団らんしていた真理も、輝美の言葉を聞くと同意するように近づいてきた。

…その後は、言うまでもなくそれぞれが楽しい時間を過ごした。

陽気に楽しく飲む者達、女同士で話が盛り上がっている者達、いつの間にかカードゲームなどが始まり盛り上がっている者達…

それぞれ自分なりに楽しみ方は違うが、そこには皆んな笑顔が有りそして笑い声が響いていた。

「こうやって笑って笑顔でいられる…幸せなことよねぇ…笑顔は幸せを呼ぶ、幸せな気持ちにしてくれる…」

朝早くから張り切りすぎたせいか、やはり少し体に負担がきたようで立っているのが辛くなった真理は、部屋の端に信也が用意してくれた椅子に座り、皆んなの笑顔を眺めながらしみじみと呟いた。

「…ん…?真理…具合い悪いのか?」

部屋の端でポツリと椅子に座っている真理を見つけ、信也とカードゲームを楽しんでいた真司が、心配そうに近寄ってきた。

「辛かったら寝室で横になっててもいいんだよ…」

真司の後ろからついて来た信也も同じように心配そうな表情で声をかけた。

「ぅん…ちょっと立ってるの辛くなっただけだから…大丈夫、座ってれば…」

「そっか…じゃ、パパ達と一緒にゲームでもやるか?」

「おっ…!いいね、座ったままで出来るし…まーちゃん、一緒にやろう」

「ゲームかぁ…何するの?」

二人からの誘いに、パッ…と表情が変わり声も明るい声で聞いてきた真理に、真司は答えた。

「ん~~…そうだな…パパはさっきまで信也君とカードゲームしてたけど…よし、この際だから他の皆んなも誘って、ワイワイやろうか?」

「いいすねぇ…せっかくだし皆んなで楽しくゲームしましょうよ!ねっ?まーちゃんも、いい?」

「w…なんか、パパとしん君、息ぴったりねww
うん、皆んなで楽しく、いいね…今日はそのための集まりだしね」

「よしっ!じゃあ…何するかなぁ…あっ…そういえば最近使ってなかったけど、カラオケセットもあったよなぁ…」

独り言のように言った信也の言葉に、真司はピクッと反応した。

「おっ?カラオケかぁ…信也君、カラオケもいいねぇ」

「えっ!?まぢすか?お義父さん、カラオケします?」

「最近は歌ってないが…そういえば、真理ともよく一緒にカラオケ行ってたな…」

その頃を思い出すように、真理を懐かしそうに見つめながら真司は言った。

「そうねぇ…ママも一緒に三人で行ったり、パパと二人だったり…パパってば、結構いい声してんのよね…w」

真司の言葉に応えるかのように、クスッと笑いながら真理も懐かしそうに言った。

「ほぉ~…じゃ、尚更聞きたいな…お義父さんも久しぶりに、歌いたいですよね?」

「そうだな…最近はそんな機会なかったからな…久しぶりに歌うのも悪くないか…」

「よっしゃ〜!じゃ、決まり!俺、奥の部屋からカラオケセット持ってくるから…まーちゃんとお義父さんはカラオケ大会すること、皆んなに説明しといて…」

そう言いながら信也はその場をそそくさと離れて行った。

残された二人は信也に言われたとおり今からカラオケ大会をすることになったことを説明し、参加の声かけをした。

意外にも皆んなノリノリでカラオケに賛成で乗り気だった。

「カラオケ!いいですねぇ…私、アニソンとか歌っていいですかぁ?」

「よっしゃ!俺の十八番、歌っちゃおうかなぁ…」

「あっ…誰かヴィエット一緒にしようぜぇ」

「ねぇねぇ…演歌とか歌える?」

それぞれが自分の歌への意気込みやアピールで盛り上がっていた。

そこへカラオケセットを持って信也が戻ってきた。
すると、わらわらと信也の周りに皆んなが集まり始めた。

…さぁ、機械をセッティングし、カラオケ大会の始まりだぁ〜。

我も我もと次々と予約が入っていった。
そして、誰から始まったのか…気がつけば3曲目、4曲目…と、間が空くこともなく色んなジャンルの歌で賑わっていた。

はたから見ると完全にどこかの飲み屋のお店のような雰囲気になっていた。

「やっぱりこういうの、いいな…色んな笑顔があって、楽しいな…」

それぞれの歌に手拍子や囃し(はやし)で一緒に盛り上がりながら、真理は隣にいた信也をチラッ…と見ながら独り言のように言った。

「ぅん…俺も今日やって良かった、て思うよ…まぁ…正直、こんな盛り上がりになるとは思わなかったけどな…w」

少し苦笑いのような笑顔を見せながら、信也も真理をチラッ…と見た。

「ww…確かにねぇ…まさかカラオケ大会が始まっちゃうとはね…w」

声を殺すように、ククククッ…と、真理は笑っていた。

「ね…しん君…こんな時に言うのもなんだけど…
もう一つ、わがまま言っていい?」

「ん?…どしたん?」

「もうすぐ、毎年恒例の鹿屋基地でのエアメモがあるの…久しぶりに見に行きたいなぁ…て…」

「エアメモ…?あぁ~…前に一度、まーちゃんとまーちゃんのご両親と一緒に行った、あれ?」

「そう、それ…久しぶりに行きたいな…」

「そっか…わかった…じゃ、まーちゃんのご両親も一緒に行けるか、聞いてみよう?」

突然の真理からの申し出に、少し戸惑いを覚えながらも信也は優しく前向きな返答をした。

そんな二人の会話を他所(よそ)に、他の皆んなは相変わらずカラオケで盛り上がっていた。

そして…気がつくと太陽は沈み、外は暗くなり夜の時刻になっていた。