虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

「俺が、六歳の時だった。二人とも仕事が一通り片付いたから久しぶりに家族で出かけようと話になった。そこで、俺が言ったんだ。ピ

クニックに行きたい、って。そうせいで二人は死んだ。というか、俺が殺した」

 淡々と過去のことについて話す悠華さんは、笑っていた。だけど、その笑みはどこか他人事で、でも過去の自分を嘲笑っているよう
にも見える。

「鬼の末裔の中で一番力を持っていた鬼頭家を邪険に思っていた家も多かった。だから、両親は暗殺されたんだ。ナイフを持った鬼の
一族に」

「一族?」

鬼の末裔って、鬼頭家もそうだったはず。なのに、仲間打ち?

そんなの・・・。

いや、そんなものだ。人間というのは欲に逆らえない。

「ああ、鬼の一族というのは、鬼の末裔たちのことだ。鬼の末裔と言っても、もとは鬼というあやかしが祖。だから一応一族なんだが、あのころは二派に分かれていた。人間と関わっていくことを良しとしていた末裔派。人間と関わることを反対していた直系派。直系派は、人間を交えることを嫌っていたがため、鬼の一族の中にも末裔で血が薄れている者や血をそのまま受け継いでいる直系の者がいた。そのせいで、鬼の一族の中で派閥争いがあった。それがようやく片付け始まり、よい方向へ向かい始めた時だった」

 それまでは感情をどこかに捨ててきてしまったような声で語っていた。でも、よくいると膝の上に置かれている拳は握りしめすぎて白くなっていた。

「なのに、まだ諦めていない直系の鬼が十人ほどナイフを持って公園にいた俺たちを囲んで、俺を守りながら戦った両親は刺された。直系の鬼は、末裔よりも強い力を持っている。だけど、俺の両親は末裔でありながらも多少は力が強かった。それは直系と渡り合えるほど。だけど、俺を守りながらあの数と戦うのは難しい。」

 なんとなく悠華さんがそのことをどう思っているのか、わかってしまった。思わず白くなりすぎている拳を包み込む。だけど、悠華さんはこっちを見てくれない。

「両親を殺したのは俺だ。俺がいなければ二人はしなずにすんだ」

「それは勝手な自己満足では?」

 今の悠華さんにこんなことをいうのは酷かもしれない。だけど、それは意味がないことだ。

「いや、この戦い自体が俺のせいなんだ」

「どういう意味です?」

「久しぶりの家族との休日で浮かれていて、屋敷中に言いふらしたんだ。『今日、春になると桜が咲き乱れる公園で、ピクニックする』と。その中に間者がいるとも知らずに」
 
 それでも、やっぱりあなたの『それ』は自己満足です。そう言えたらどれだけ良かったか。それを言えるほど私は人間を捨ててないらしい。

 だって、悠華さん。今、すごく泣きそうな顔してる。

「両親が死んでから、仕事を継いで必死にあの日のことを調べて、間者を見つけ出した。そして、両親が実現しようとしていたことを実現しようと思った。だから、まずは直系派の力を潰した。そして、鬼や鬼以外のあやかしを統率した。両親が死んでから三年後だ。だけど、両親が目指したやり方とは、全く違うやり方ではなかった。片っ端から力でねじ伏せ上に立ってきた。そうじゃないと、また両親のように大切な人を、家族を、仲間を守れないから。その時に哉や由和や瀬和と出会ったんだ」