虐げられた少女は、無償に愛される ~だけど少女は逃げ出したい!~

「なんか帰ってきた感じですね」

 悠華さんの屋敷に戻って出た始めの一言は、先ほどの雰囲気とは正反対なものだった。

「そうだね。やっと俺たちの家に全員そろった感じがするよ」

「そうそう!千鶴がいなくて寂しかったんだから!」

 そう勢いよく抱き着いてきた由和を受け止め、抱きしめ返す。

「心配かけてごめんね」

「本当にね。こういうのはお金持ちの悠華に言っちゃえばもしかしたらなんとかなったかもしれない。悠華なら千鶴ちゃんのためになんでもやると思うよ」

 私たちの様子を微笑ましい様子でこちらを見てくる。そんな哉さんの言うことはあながち間違いではないと今では思えてしまう。

「由和、そろそろ離してあげなよ」

 瀬和はやっぱりそうやって困ってたらすぐに気づいてくれる。その優しさが今は温かすぎる。

「千鶴、おかえり」

 何よりも優しい視線でこっちを見てくる。その優しさと少しの強引さに惹かれていたんだ。

「ただいま!」

 思わず千鶴さんに抱き着いてしまう。後ろから「お!よかったじゃん」「千鶴~」「良かったね」とか野次が聞こえてくるけど、きにならない。

「えっ、どうしたの?なんか痛かったりするの?」

「違いますよ。」

「ほんとにどうしたの?」

「抱きしめちゃだめなんですか?」

「いや、それはめちゃくちゃうれしいけど」

なら、なんで慌ててるの?

「じゃあ、なんで?」

ちょっとぐらい嬉しがってもいいと思うんだけどなぁ。

「あのね、まずは寝ようか。さっきまで真っ白な顔だったんだよ?今はちょっとマシになってるとはいえね」

そういわれるとだんだん、眠くなってきた。

フラフラと足元がおぼつかないのに、気づいて悠華さんが抱き留めてくれた。

「おやすみ、千鶴」

意識が飛びそうな中、悠華さんの優しさを含んだ声が聞こえた気がした。