「それで……洛世は、幽霊が見えるか確かめるために、僕と手を繋いでみようと思ったの?」
「うん」
「男と手を繋ぐとか、嫌な感じとかは?」
「いや、そういうのは一切ない。それに、晶哉は、手も小さいし、動きもちょこまかしてるし、齧歯類みたいで可愛いじゃないか」
齧歯類……つまり、ハムスターとか、そういう小動物だ。
「えー……」
思わず声を上げると、またも、洛世が首を捻る。
「『普通』は、こういうことも言わないのだろうか?」
洛世の表情は、真剣そのものだった。しかし、会話の内容としては、かなり滑稽であることは間違いない。
「普通は、同性相手には、そういう言い方はしないんじゃないかな」
「どのあたりが?」
「んー、例えば、僕が、洛世のことを、頭が良いとか、背が高くてすらっとしてるとか、顔が整ってて綺麗っていうのは、そこまでおかしくないと思う」
「じゃあ、俺のは何がダメだったんだ?」
本気で、洛世は解らないらしい。
「そうだなあ、普通は、男には可愛いとかあんまり言わないと思う」
「なぜ?」
「なぜと言われても」
「ということは、可愛いという言葉には、俺が知らない、何らかの別な意味が含有されているということか? それは、辞書で判別が付くことだろうか」
「多分、付かないと思うけど……可愛いってさ、普通は言いにくいと思うんだよね。男子は。それに、可愛いって、小さくて愛らしいとかそういう意味があるのか解らないけど、そういうニュアンスで話すと思う。それを他の男子に当てはめてもなんか、違和感が」
「小さくて愛らしいなら、晶哉は、その通りではないのか?」
そう言われてしまって、晶哉は、机に突っ伏してしまうかと思った。しかし、手は繋いだままだ。
「……なんか、変人というか、ド天然というのは解った。とりあえず、僕の話はおいといて、ただ、手を繋ぎたかっただけじゃないんだろ?」
今度は、確信を持って聞くと、洛世は少し戸惑ったように狼狽えてから、こくん、と肯いた。
「そうなんだ。実は、最近、夢を見てる。毎日同じ夢だ。この間見かけたあの女性の幽霊が、『ここに女の子がいるから助けてあげて』って、毎日」
まさか、怪談に巻き込まれるとは思わずに、手を引こうとしたら、ぎゅっと掴まれた。
「頼む」
「えー、イヤだよ」
「何も言ってないじゃないか。それに、この間は、晶哉と一緒に帰っただろう。少しくらい、手伝ってくれよ! 俺は、安眠を心がけたいし、それに、あの女の人ももしかしたら、成仏出来るかもしれないじゃないか」
洛世の表情は真剣そのものだった。
(あ、また、なんかキラキラしてる……)
先ほどまでは、なかったが、洛世の身に纏う空気が、妙にキラキラしている。
これはどういうことなのかと、晶哉は首を捻った。ただ、とても居心地が良い空気だとは感じている。
「……素人がうかつに霊の頼みなんか、聞いちゃいけないんじゃない? 危ないと思うけど」
「危ない? あの人は、別な子供のために助けを求めているんだぞ?」
「囮かも知れないじゃないか」
「……なるほど、結構、晶哉は、慎重なんだな。わかった。とりあえず、危険そうなら身を引いて、どこかの神社か寺で除霊を頼もう」
この辺が譲歩のしどころかも知れないと思った晶哉は、「わかった」とだけ返事をする。
「じゃあ、すぐ、現場に行こう。なんか、呼ばれてる感じがするんだ」
洛世は急に立ち上がる。手を引っ張られて、晶哉も一緒に立ち上がるがバランスを崩した。
「わっ……倒れ……っ」
倒れる、と思って身構えたが、予想した衝撃はこなかった。
洛世に、抱き留められたからだった。
「うん」
「男と手を繋ぐとか、嫌な感じとかは?」
「いや、そういうのは一切ない。それに、晶哉は、手も小さいし、動きもちょこまかしてるし、齧歯類みたいで可愛いじゃないか」
齧歯類……つまり、ハムスターとか、そういう小動物だ。
「えー……」
思わず声を上げると、またも、洛世が首を捻る。
「『普通』は、こういうことも言わないのだろうか?」
洛世の表情は、真剣そのものだった。しかし、会話の内容としては、かなり滑稽であることは間違いない。
「普通は、同性相手には、そういう言い方はしないんじゃないかな」
「どのあたりが?」
「んー、例えば、僕が、洛世のことを、頭が良いとか、背が高くてすらっとしてるとか、顔が整ってて綺麗っていうのは、そこまでおかしくないと思う」
「じゃあ、俺のは何がダメだったんだ?」
本気で、洛世は解らないらしい。
「そうだなあ、普通は、男には可愛いとかあんまり言わないと思う」
「なぜ?」
「なぜと言われても」
「ということは、可愛いという言葉には、俺が知らない、何らかの別な意味が含有されているということか? それは、辞書で判別が付くことだろうか」
「多分、付かないと思うけど……可愛いってさ、普通は言いにくいと思うんだよね。男子は。それに、可愛いって、小さくて愛らしいとかそういう意味があるのか解らないけど、そういうニュアンスで話すと思う。それを他の男子に当てはめてもなんか、違和感が」
「小さくて愛らしいなら、晶哉は、その通りではないのか?」
そう言われてしまって、晶哉は、机に突っ伏してしまうかと思った。しかし、手は繋いだままだ。
「……なんか、変人というか、ド天然というのは解った。とりあえず、僕の話はおいといて、ただ、手を繋ぎたかっただけじゃないんだろ?」
今度は、確信を持って聞くと、洛世は少し戸惑ったように狼狽えてから、こくん、と肯いた。
「そうなんだ。実は、最近、夢を見てる。毎日同じ夢だ。この間見かけたあの女性の幽霊が、『ここに女の子がいるから助けてあげて』って、毎日」
まさか、怪談に巻き込まれるとは思わずに、手を引こうとしたら、ぎゅっと掴まれた。
「頼む」
「えー、イヤだよ」
「何も言ってないじゃないか。それに、この間は、晶哉と一緒に帰っただろう。少しくらい、手伝ってくれよ! 俺は、安眠を心がけたいし、それに、あの女の人ももしかしたら、成仏出来るかもしれないじゃないか」
洛世の表情は真剣そのものだった。
(あ、また、なんかキラキラしてる……)
先ほどまでは、なかったが、洛世の身に纏う空気が、妙にキラキラしている。
これはどういうことなのかと、晶哉は首を捻った。ただ、とても居心地が良い空気だとは感じている。
「……素人がうかつに霊の頼みなんか、聞いちゃいけないんじゃない? 危ないと思うけど」
「危ない? あの人は、別な子供のために助けを求めているんだぞ?」
「囮かも知れないじゃないか」
「……なるほど、結構、晶哉は、慎重なんだな。わかった。とりあえず、危険そうなら身を引いて、どこかの神社か寺で除霊を頼もう」
この辺が譲歩のしどころかも知れないと思った晶哉は、「わかった」とだけ返事をする。
「じゃあ、すぐ、現場に行こう。なんか、呼ばれてる感じがするんだ」
洛世は急に立ち上がる。手を引っ張られて、晶哉も一緒に立ち上がるがバランスを崩した。
「わっ……倒れ……っ」
倒れる、と思って身構えたが、予想した衝撃はこなかった。
洛世に、抱き留められたからだった。