人骨が見つかってから、話は早かった。
そして、洛世が作っていた資料は警察に、幽霊のことを話さなくても、ボランティア同好会の活動でなんとか乗り切ることが出来た。
その後、隣県と、本県合同捜査本部が作られ、徹底的な山狩りが行われた。
結果、西島永遠と、行方不明になっていた女性、篠宮里奈の白骨化した遺体が発見された。
篠宮里奈の白骨死体は、何かを掴んでいたらしい。
それは、人間の髪の毛と、そして、名刺らしいカードだった。ぎゅっと握りしめられていたことで、劣化から守られていたのだろうと、警察は語った。おそらく、篠宮里奈が、命がけで守っていた『証拠』だった。
名刺と毛髪から、人物が特定されたが、『事件との因果関係はない』として、特に証拠として採用はされなかった。
西島永遠と篠宮里奈の遺体はそれぞれ遺族に引き取られ、彼女たちの霊も、家族の元へと帰って行った。
「本当に、あなたたちボランティア同好会のおかげで、娘と、こちらの妹さんが見つかりました。本当に、ありがとう」
そう言って、里奈の母親は涙を流しながら、洛世の手を取った。その時、里奈は微笑をうかべてから、事件の経緯を語ってくれた。
あの日、頭痛がする為、早退してひとり暮らしのアパートに帰ろうとしたら、白いスポーツカーに乗った男に声を掛けられた。
しつこくしてきて、名刺を渡されたが、そのまま相手にせず振り切ったと思ったら、後ろから、ドンッという音が聞こえたらしい。
振り返ると、あのスポーツカーが小学生を轢いたところだった。そのまま、Uターンして逃げようとしたので立ちはだかったら、轢かれて、車に乗せられた。その時、必死で男の髪を掴んで引きちぎったらしい。
この話は、誰も目撃者がいないから、あの男以外には、事実を知らない。
本当は、永遠の為に復讐したかったが、それは出来なかったという。
これだけを語って、彼女は母親と一緒に、故郷へ帰って行った。
「洛世」
「なに」
洛世の部屋で、転がりながら晶哉は聞いた。
「あの、名刺の名前って誰だったの?」
「市議会議員のドラ息子」
「はあっ?」
思わず、声を荒らげた。
「一応、匿名掲示板に、それらしい書き込みがされてる。警察の中の人が、情報をリークしたみたいだ。『名刺が手に握られてたのは偶然だって言われて、相手に確認にも行かせて貰えなかった』だそうだ。
市議会議員、小室俊政の息子で、秘書の小室右京だ」
「知ってるよ。……っていうか、里奈さんと永遠ちゃんは、満足して帰って行ったかも知れないけどさ」
「うん」
「僕は復讐したい」
「奇遇だな。俺もそう言おうと思っていた。しかし……思いつかない」
「そうだなあ……どうすればいいだろ」
「ネットから何かして、逆に訴えられても面倒だしな」
「そうだな……あ、市議会議員のドラ息子って言ったら、あの道はいつも使ってるよ! スポーツカーで、めちゃくちゃ飛ばしてる」
「なるほど……じゃあ、ちょっと、やってみるか」
洛世と、晶哉は、いつも通りボランティア同好会の活動として、ゴミ拾いをやっている。
永遠を見つけられたら解散しようと思っていたら、警察から賞状が出るという話になったため、辞められなくなってしまったのだった。
だが、普段の格好ではなく、白いワンピースを着てやることにした。コレならば幽霊に見えるだろう。
「学生服だと車から解らないとクレームが入ったので、コスプレをして活動しようと思う」
と学校側には説明している。
通販で衣装を調達し、ゴミ拾いを実施することにした。
しばらくゴミを拾っていると、遠くのほうから、ものすごい排気音を響かせながら、猛然と車が近付いてくる気配があった。
晶哉と洛世は、カーブの所に立つことにした。
二人並んで、カーブの所に立っている。
車は猛然と近付いてきたが、急にタイヤが、動物の断末魔のような音を立てた。そして、ドンッという音と共に、ガードレールを越えて、車が山のほうへ落下していった。
「これ、やり過ぎた?」
「まあ、人二人殺してるんだから、自業自得だろ。俺たちは、白線の内側で、猛スピードでやってくる車を避けていただけだし。あいつの車に付いてるドラレコが証明してくれるだろうさ。さて、本当に不本意ながら、救急と警察呼ぶか」
そして程なく、救急車と警察が到着して、「最近君らによく会うね。今日は、コスプレ?」と警察に言われてしまった。
「学生服だと黒くて危ないって言われたんで、ワンピースを買ってみたんですけど」
「そっか。確かに学生服はね」
警察は笑いながら、崖下に落ちているスポーツカーを見ていた。
「高そうな車なのに、もったいないなー……」
現実的な事を言う警察が、少し面白かった。
そして、洛世が作っていた資料は警察に、幽霊のことを話さなくても、ボランティア同好会の活動でなんとか乗り切ることが出来た。
その後、隣県と、本県合同捜査本部が作られ、徹底的な山狩りが行われた。
結果、西島永遠と、行方不明になっていた女性、篠宮里奈の白骨化した遺体が発見された。
篠宮里奈の白骨死体は、何かを掴んでいたらしい。
それは、人間の髪の毛と、そして、名刺らしいカードだった。ぎゅっと握りしめられていたことで、劣化から守られていたのだろうと、警察は語った。おそらく、篠宮里奈が、命がけで守っていた『証拠』だった。
名刺と毛髪から、人物が特定されたが、『事件との因果関係はない』として、特に証拠として採用はされなかった。
西島永遠と篠宮里奈の遺体はそれぞれ遺族に引き取られ、彼女たちの霊も、家族の元へと帰って行った。
「本当に、あなたたちボランティア同好会のおかげで、娘と、こちらの妹さんが見つかりました。本当に、ありがとう」
そう言って、里奈の母親は涙を流しながら、洛世の手を取った。その時、里奈は微笑をうかべてから、事件の経緯を語ってくれた。
あの日、頭痛がする為、早退してひとり暮らしのアパートに帰ろうとしたら、白いスポーツカーに乗った男に声を掛けられた。
しつこくしてきて、名刺を渡されたが、そのまま相手にせず振り切ったと思ったら、後ろから、ドンッという音が聞こえたらしい。
振り返ると、あのスポーツカーが小学生を轢いたところだった。そのまま、Uターンして逃げようとしたので立ちはだかったら、轢かれて、車に乗せられた。その時、必死で男の髪を掴んで引きちぎったらしい。
この話は、誰も目撃者がいないから、あの男以外には、事実を知らない。
本当は、永遠の為に復讐したかったが、それは出来なかったという。
これだけを語って、彼女は母親と一緒に、故郷へ帰って行った。
「洛世」
「なに」
洛世の部屋で、転がりながら晶哉は聞いた。
「あの、名刺の名前って誰だったの?」
「市議会議員のドラ息子」
「はあっ?」
思わず、声を荒らげた。
「一応、匿名掲示板に、それらしい書き込みがされてる。警察の中の人が、情報をリークしたみたいだ。『名刺が手に握られてたのは偶然だって言われて、相手に確認にも行かせて貰えなかった』だそうだ。
市議会議員、小室俊政の息子で、秘書の小室右京だ」
「知ってるよ。……っていうか、里奈さんと永遠ちゃんは、満足して帰って行ったかも知れないけどさ」
「うん」
「僕は復讐したい」
「奇遇だな。俺もそう言おうと思っていた。しかし……思いつかない」
「そうだなあ……どうすればいいだろ」
「ネットから何かして、逆に訴えられても面倒だしな」
「そうだな……あ、市議会議員のドラ息子って言ったら、あの道はいつも使ってるよ! スポーツカーで、めちゃくちゃ飛ばしてる」
「なるほど……じゃあ、ちょっと、やってみるか」
洛世と、晶哉は、いつも通りボランティア同好会の活動として、ゴミ拾いをやっている。
永遠を見つけられたら解散しようと思っていたら、警察から賞状が出るという話になったため、辞められなくなってしまったのだった。
だが、普段の格好ではなく、白いワンピースを着てやることにした。コレならば幽霊に見えるだろう。
「学生服だと車から解らないとクレームが入ったので、コスプレをして活動しようと思う」
と学校側には説明している。
通販で衣装を調達し、ゴミ拾いを実施することにした。
しばらくゴミを拾っていると、遠くのほうから、ものすごい排気音を響かせながら、猛然と車が近付いてくる気配があった。
晶哉と洛世は、カーブの所に立つことにした。
二人並んで、カーブの所に立っている。
車は猛然と近付いてきたが、急にタイヤが、動物の断末魔のような音を立てた。そして、ドンッという音と共に、ガードレールを越えて、車が山のほうへ落下していった。
「これ、やり過ぎた?」
「まあ、人二人殺してるんだから、自業自得だろ。俺たちは、白線の内側で、猛スピードでやってくる車を避けていただけだし。あいつの車に付いてるドラレコが証明してくれるだろうさ。さて、本当に不本意ながら、救急と警察呼ぶか」
そして程なく、救急車と警察が到着して、「最近君らによく会うね。今日は、コスプレ?」と警察に言われてしまった。
「学生服だと黒くて危ないって言われたんで、ワンピースを買ってみたんですけど」
「そっか。確かに学生服はね」
警察は笑いながら、崖下に落ちているスポーツカーを見ていた。
「高そうな車なのに、もったいないなー……」
現実的な事を言う警察が、少し面白かった。