一晩中抱きつかれて精神的に疲弊していた晶哉とは裏腹に、洛世は一日中、機嫌が良かった。
洛世曰く『小動物を抱いて寝るのはこの上ない癒やし』だそうだが、晶哉は腑に落ちない。
なぜ、小動物扱いされなければならないのか。
けれどもう一つ理不尽なのは、抱きしめられてから、洛世を見るたびに、キラキラして見える。引き寄せられる。それは、多分、友情の意味ではないような気がして、戸惑っていた。
毎日、『ボランティア同好会』としてゴミ拾いに勤しんでいると、様々な人に出会う。
わざわざ車を停車させて、「お疲れ様。毎日ゴミ拾いしてるよね。これ、差し入れ」と買ったばかりのジュースを差し入れてくれる人。
「ゴミ拾いとか、ダセェ」といいながら、わざわざ、ゴミを捨てていく人。このおかげで、晶哉はタバコの吸い殻を頭から被った。
近所の人は、ここまで歩いてこない。
だが、登下校中の学生や先生が、声を掛けてくれることもあるし、スマホとイヤホンで全く気付いていないこともある。
わざわざ、「そういうことしてるヒマは、俺にはないんで」と笑ってくるクラスメイトもいて、その人とは距離を置こうと心に決める。
色々な人がいるなと、晶哉は思った。
いい人も、嫌な人も。誰にも関係のないゴミ拾いをして居てもそう思う。
ゴミ拾いをして、4日ばかり経ったとき、
「おい、晶哉」
と呼ぶ声がして、晶哉は洛世に駆けつける。
洛世が見せたのは『オジサンウサギの健次郎』のキーホルダーだった。
「これ、とわの、だな?」
近くにいるとわに聞いてみると、顔を輝かせて、こくん、と肯いたのが解った。
「とわので間違いない?」
洛世が聞く。
「そうだって」
「よし、じゃあ、とわ。お前、いま、どのあたりに居る?」
洛世が、晶哉の手を取る。ドキッと胸が跳ねた。今は、それどころではないのに、胸が騒ぐ。
「……言えないなら、指を差してくれればいい」
けれど、とわは、ふるふると頭を振るだけだった。どうも、自分に関わることを自発的に言うことは出来ないらしい。
「困ったな」
「まあ、このあたりを重点的に探そう。すこし、気分が明るくなったよ。とわちゃん、ちゃんと、みつけてお兄さんのところに届けるからね」
とわを安心させるように言うと、彼女は、こくん、と肯いた。
それから、二日、同じ場所を重点的に探していると、『にしじまとわ』の名前が入った、巾着袋が見つかった。
「給食の何かを入れていた袋?」
「そうらしいな。じゃあ、まずは、これを……、お兄さんのところに連絡することにする」
とわは、嬉しそうな顔をしていたが『あの』と小さく呟くのが聞こえた。
「どうした、とわ」
『あのお姉さん、ずっと一緒に居てくれたの。だから、あの人のことも、助けて』
あの女性のことは、晶哉も気になっていたが、手がかりになるようなものは、見つけることは出来なかった。そして、最近は、あまり姿を見ていない。
「あのお姉さんも、とわの近くに居るの?」
『たぶん』
多分、というのだから、よく解らないのだろう。どう、返答して良いか迷っている晶哉だったが、
「晶哉」
洛世によばれた。
「ん、どうしたの?」
「勿論、この山一体は、綺麗に捜索させよう。とわの近くに、彼女がいるならば、彼女も見つかる」
「捜索……ってどうやって」
「この給食袋と、オジサンウサギの健次郎のキーホルダーをお兄さんに渡せば、お兄さんが警察に連絡するはずだ。そうしたら、事態が動くだろう」
「なるほど、警察に捜索してもらうのか!」
そんなことを、晶哉は全く考えもしなかった。けれど、確かに、もし、『とわ本人』を晶哉たちが探し当てたりしていたら、それはそれで面倒だっただろう。
「よし、とわ。もうすぐ、お兄さんを連れてきてやるぞ!」
洛世が、ぎゅっと、晶哉の手を握りしめた。
やはり、不謹慎なことにドキドキが、とまらなかったし、洛世はキラキラして見えた。
洛世曰く『小動物を抱いて寝るのはこの上ない癒やし』だそうだが、晶哉は腑に落ちない。
なぜ、小動物扱いされなければならないのか。
けれどもう一つ理不尽なのは、抱きしめられてから、洛世を見るたびに、キラキラして見える。引き寄せられる。それは、多分、友情の意味ではないような気がして、戸惑っていた。
毎日、『ボランティア同好会』としてゴミ拾いに勤しんでいると、様々な人に出会う。
わざわざ車を停車させて、「お疲れ様。毎日ゴミ拾いしてるよね。これ、差し入れ」と買ったばかりのジュースを差し入れてくれる人。
「ゴミ拾いとか、ダセェ」といいながら、わざわざ、ゴミを捨てていく人。このおかげで、晶哉はタバコの吸い殻を頭から被った。
近所の人は、ここまで歩いてこない。
だが、登下校中の学生や先生が、声を掛けてくれることもあるし、スマホとイヤホンで全く気付いていないこともある。
わざわざ、「そういうことしてるヒマは、俺にはないんで」と笑ってくるクラスメイトもいて、その人とは距離を置こうと心に決める。
色々な人がいるなと、晶哉は思った。
いい人も、嫌な人も。誰にも関係のないゴミ拾いをして居てもそう思う。
ゴミ拾いをして、4日ばかり経ったとき、
「おい、晶哉」
と呼ぶ声がして、晶哉は洛世に駆けつける。
洛世が見せたのは『オジサンウサギの健次郎』のキーホルダーだった。
「これ、とわの、だな?」
近くにいるとわに聞いてみると、顔を輝かせて、こくん、と肯いたのが解った。
「とわので間違いない?」
洛世が聞く。
「そうだって」
「よし、じゃあ、とわ。お前、いま、どのあたりに居る?」
洛世が、晶哉の手を取る。ドキッと胸が跳ねた。今は、それどころではないのに、胸が騒ぐ。
「……言えないなら、指を差してくれればいい」
けれど、とわは、ふるふると頭を振るだけだった。どうも、自分に関わることを自発的に言うことは出来ないらしい。
「困ったな」
「まあ、このあたりを重点的に探そう。すこし、気分が明るくなったよ。とわちゃん、ちゃんと、みつけてお兄さんのところに届けるからね」
とわを安心させるように言うと、彼女は、こくん、と肯いた。
それから、二日、同じ場所を重点的に探していると、『にしじまとわ』の名前が入った、巾着袋が見つかった。
「給食の何かを入れていた袋?」
「そうらしいな。じゃあ、まずは、これを……、お兄さんのところに連絡することにする」
とわは、嬉しそうな顔をしていたが『あの』と小さく呟くのが聞こえた。
「どうした、とわ」
『あのお姉さん、ずっと一緒に居てくれたの。だから、あの人のことも、助けて』
あの女性のことは、晶哉も気になっていたが、手がかりになるようなものは、見つけることは出来なかった。そして、最近は、あまり姿を見ていない。
「あのお姉さんも、とわの近くに居るの?」
『たぶん』
多分、というのだから、よく解らないのだろう。どう、返答して良いか迷っている晶哉だったが、
「晶哉」
洛世によばれた。
「ん、どうしたの?」
「勿論、この山一体は、綺麗に捜索させよう。とわの近くに、彼女がいるならば、彼女も見つかる」
「捜索……ってどうやって」
「この給食袋と、オジサンウサギの健次郎のキーホルダーをお兄さんに渡せば、お兄さんが警察に連絡するはずだ。そうしたら、事態が動くだろう」
「なるほど、警察に捜索してもらうのか!」
そんなことを、晶哉は全く考えもしなかった。けれど、確かに、もし、『とわ本人』を晶哉たちが探し当てたりしていたら、それはそれで面倒だっただろう。
「よし、とわ。もうすぐ、お兄さんを連れてきてやるぞ!」
洛世が、ぎゅっと、晶哉の手を握りしめた。
やはり、不謹慎なことにドキドキが、とまらなかったし、洛世はキラキラして見えた。