洛世の検索能力は、恐ろしかった。
 目星を付けた情報で、web中を探し回って、ついに、それらしい子を探し出したのだった。

「顔は、似ていると思う。西島永遠。事件当時八歳。小学二年生。隣県で学校から帰宅するところを目撃されたのを最後に、行方不明となっている。2011年の3月頭だ」

「あっ……」
「このあたりも結構被害はあったが、震災の影響もあって、警察も被災地に応援に行っていたし、初期捜査はそれほど行われなかったのだと思う。そして、学年が変わってしまって、クラスに空席が無くなったんだと思う。それで関心が薄れた」
 淡々と告げる洛世の言葉に、晶哉は動揺した。

「そりゃあ、大災害で、大変だったと思うけど……それじゃ、とわちゃんは、遠く離れたここに連れられて、殺されて、あんなところで一人で震災を越えたの? 凄い、酷くない?」
 当時晶哉は四歳だった。殆ど記憶はないが、一週間くらい電気がなかったり、水がない生活を送っていたのだけは記憶にある。
 いまでも、地震は、少し怖い。

「一応、家族とか、経緯とかも調べられるだけ調べてみた」
「ご両親は、他界されている。親戚は不明。ただ、とわも言っていたように、お兄さんがいる。まだ、『西島永遠を探しています』というチラシを隣県で配っている。どこか別の土地に連れ去られたというのは、考えて居ないらしい。連絡先も判明した」
 SNSでも情報を募っているということだった。

「けどさ、僕らが、妹さんの幽霊に会いましたって言っても、信じて貰えるかな」
「解らない。なにか、証拠があれば」

「なるほど。じゃあ、必死にゴミ拾いをして物証を探そう。とわちゃんの名前が分かるヤツ。それで、お兄さんに連絡するんだ」
 晶哉の提案に「それが良いな」と洛世も笑顔で応じる。

「じゃあ、明日もゴミ拾いだな」
「うん」

「よし、宿題も片付いたし、そろそろ寝るぞ。……俺のベッドは広いから、一緒で大丈夫だろう?」
 洛世は、何でもないことのように言う。
「えっ」

「イヤか?」
「あー……」
 イヤだ、とは言えなかった。イヤ、というより、なんとなく気になっているから、気まずいというか、なんとなく、変な感じになるだけだ。
 意識、してしまうという意味で……。

「晶哉は小さいから大丈夫だろう」
「洛世は、いつも僕のことを小さい小さいっていうけど、僕はそんなに小さくないよ! それに、いびきと寝相が酷いかも知れないじゃないか!」

「まあ、そのあたりは気にしない。……小さくて愛らしいからいつもそう言っているのだが、気に障るようなら済まない。都度都度注意してくれると助かる」
「改善する気はないのかよ」

「そう思ってしまうものをコントロールするのは難しい」
 訳の分からない主張だ。晶哉は、深々とため息を吐いた。この家ならば、客間くらいありそうだ。だが、あの洛世の母が、そちらに案内しなかったと言うことは、『お友達同士で一緒に寝た方が良い』ということだろう。

「蹴り飛ばすかも知れないけど」
「それはお互い様だろう。俺も自分の寝相は知らない」
 なんとなく、微動だにしなさそうだな、と晶哉は思ったが、口には出さなかった。