その日のゴミ拾いを追えた洛世は、すぐに調べはじめた。
「とわ、という名前の女の子で、行方不明者を探す……年代は2008年から2012年」
ものすごい勢いでPCを操作するのを見ながら、晶哉は、洛世の部屋で、所在なくぼんやりと立ち尽くしていた。
「警察庁に、『行方不明者に関する情報提供のお願い』というページが存在するんだ。ここの情報を片っ端から見ている」
画面を見ると、管区ごと、都道府県警察ごとにリンクが貼られていて、そこにアクセスすると行方不明者の情報が公開されている。
都道府県警察に寄って警察の仕方はまちまちだったが、フルネームと写真や身長なども掲載されていることもあった。
「殆ど、お年寄りだね」
「ああ。……このあたりでも、毎日のように、行方不明の高齢者を探しているって、放送が入るだろ」
大抵の場合は、戻ってくるが、戻ってこない人というのも存在するのだ、と晶哉は気分がずん、と沈むのを感じていた。
「それに、いろんな情報を募っているんだな」
事件や事故の目撃情報、殺人事件、身元不明の遺体に関する情報、強盗に関する情報……。
普通に生活しているだけでは、こんなに広く情報を求めていることなど、知らなかっただろう。
「俺は、ひき逃げ死亡事件だと思っている。であれば、行方不明として、親御さんやお兄さんが探していると思う。が、あの子の顔を、この近所で『探し人』としてチラシとかを見たことはない」
「つまり……」
「他の地域でひき逃げされて、ここに連れてこられて遺棄されたと考えている」
晶哉は、言葉を失った。
たしかに、そう考えるのが、一番かもしれない。
「じゃあ、警察……」
「幽霊では動いてくれない。せめて、あの子の遺体を探さないと、始まらないんだ。警察庁のサイトからだと、直近の行方不明者くらいしか掲載されていないみたいだ。都道府県別だと、三ヶ月ということもある……地道に検索するか」
「とわ、ちゃんっていう行方不明者、だよね」
「ああ。俺は、調べて居るから、晶哉は、まず、宿題を片付けてくれ。出来たら声を掛けろ。答えは俺が見てやる」
洛世はいつ宿題をするのだろうかと思った晶哉だったが、言葉に甘えることにした。
今日は、数学と英語の長文読解をこなさなければならない。
電子辞書を取りだして、まずは、苦手な英語から片付けることにした。
二時間も経って、洛世の家で夕食までごちそうになってしまった。
「今日は遅いから、うちに泊まって行ったら良いだろう」
という洛世の提案に、洛世の母も、大歓迎の様子だった。
「凄いわ、洛ちゃん! お友達がお泊まりに来てくれるなんて! 本当に、晶哉くん、末永くお願いしますね!」
まるで、未来の花嫁にでも掛けるような言葉を言いつつ、洛世の母は、満面の笑みで晶哉の手を取る。
洛世が、うんざりしたような顔をして「だからうちに連れて来たくないんだよ」というが、晶哉の記憶にある限り、洛世が誰かと親しくして居た記憶が無い。
予備のパジャマと買い置きの下着まで出してもらい、恐縮したが、
「うちのかーさん、世話焼きだから、世話焼かれてくれるとこっちに来る分が減ってありがたい」
などという洛世の、大変罰当たりな言葉に、甘えることにした。
二時間後、宿題の経過を聞かれ、まだ終わっていないと告げると、この世の終わりのような、絶望した表情をされたので心が痛くなった。
そこから、二時間、マンツーマンで指導され、一緒に風呂に入ると言うことになった。
「なんで……一緒?」
「晶哉を待つのがめんどくさい」
という洛世だったが、晶哉のほうは、気恥ずかしい。
洛世は、なんとも思わないから、平気で手を繋いでくるのだろうが、晶哉は、そのたびに、ドキっとしているのだ。
「とわ、という名前の女の子で、行方不明者を探す……年代は2008年から2012年」
ものすごい勢いでPCを操作するのを見ながら、晶哉は、洛世の部屋で、所在なくぼんやりと立ち尽くしていた。
「警察庁に、『行方不明者に関する情報提供のお願い』というページが存在するんだ。ここの情報を片っ端から見ている」
画面を見ると、管区ごと、都道府県警察ごとにリンクが貼られていて、そこにアクセスすると行方不明者の情報が公開されている。
都道府県警察に寄って警察の仕方はまちまちだったが、フルネームと写真や身長なども掲載されていることもあった。
「殆ど、お年寄りだね」
「ああ。……このあたりでも、毎日のように、行方不明の高齢者を探しているって、放送が入るだろ」
大抵の場合は、戻ってくるが、戻ってこない人というのも存在するのだ、と晶哉は気分がずん、と沈むのを感じていた。
「それに、いろんな情報を募っているんだな」
事件や事故の目撃情報、殺人事件、身元不明の遺体に関する情報、強盗に関する情報……。
普通に生活しているだけでは、こんなに広く情報を求めていることなど、知らなかっただろう。
「俺は、ひき逃げ死亡事件だと思っている。であれば、行方不明として、親御さんやお兄さんが探していると思う。が、あの子の顔を、この近所で『探し人』としてチラシとかを見たことはない」
「つまり……」
「他の地域でひき逃げされて、ここに連れてこられて遺棄されたと考えている」
晶哉は、言葉を失った。
たしかに、そう考えるのが、一番かもしれない。
「じゃあ、警察……」
「幽霊では動いてくれない。せめて、あの子の遺体を探さないと、始まらないんだ。警察庁のサイトからだと、直近の行方不明者くらいしか掲載されていないみたいだ。都道府県別だと、三ヶ月ということもある……地道に検索するか」
「とわ、ちゃんっていう行方不明者、だよね」
「ああ。俺は、調べて居るから、晶哉は、まず、宿題を片付けてくれ。出来たら声を掛けろ。答えは俺が見てやる」
洛世はいつ宿題をするのだろうかと思った晶哉だったが、言葉に甘えることにした。
今日は、数学と英語の長文読解をこなさなければならない。
電子辞書を取りだして、まずは、苦手な英語から片付けることにした。
二時間も経って、洛世の家で夕食までごちそうになってしまった。
「今日は遅いから、うちに泊まって行ったら良いだろう」
という洛世の提案に、洛世の母も、大歓迎の様子だった。
「凄いわ、洛ちゃん! お友達がお泊まりに来てくれるなんて! 本当に、晶哉くん、末永くお願いしますね!」
まるで、未来の花嫁にでも掛けるような言葉を言いつつ、洛世の母は、満面の笑みで晶哉の手を取る。
洛世が、うんざりしたような顔をして「だからうちに連れて来たくないんだよ」というが、晶哉の記憶にある限り、洛世が誰かと親しくして居た記憶が無い。
予備のパジャマと買い置きの下着まで出してもらい、恐縮したが、
「うちのかーさん、世話焼きだから、世話焼かれてくれるとこっちに来る分が減ってありがたい」
などという洛世の、大変罰当たりな言葉に、甘えることにした。
二時間後、宿題の経過を聞かれ、まだ終わっていないと告げると、この世の終わりのような、絶望した表情をされたので心が痛くなった。
そこから、二時間、マンツーマンで指導され、一緒に風呂に入ると言うことになった。
「なんで……一緒?」
「晶哉を待つのがめんどくさい」
という洛世だったが、晶哉のほうは、気恥ずかしい。
洛世は、なんとも思わないから、平気で手を繋いでくるのだろうが、晶哉は、そのたびに、ドキっとしているのだ。