「まさか、同好会を立ち上げるとは」
洛世が、呆れたような顔をしながら言う。
学校の『公認同好会』となった証の、腕章を付けた姿で、軍手と、ゴミ拾い用のトング。そしてビニール袋。マスク。ヘッドライト。
「いいだろ? 『ボランティア同好会』ってことで、通学路のゴミ拾いをやりますって言ったら、受験対策とか学校のPRにも良いなって、大賛成されたよ」
「俺にはなかった発想だ」
「とにかく、これで、問題なく、捜し物は出来る。……あの女の人が立っていたあたりが一番怪しいと思うから、その辺を、重点的にやろう」
学校に至る通学路の丁度半ばくらいのカーブの所だ。
「たしかに、あのあたりはゴミが酷いな」
「車の人たちが、ゴミを投げ捨てるからね」
「人として終わってるだろ」
ため息を吐きながら、現場に向かう。女の人は居なかったが、女の子はいた。
「晶哉」
洛世が手を出してくる。その手を、晶哉は握り返した。
「あ、見えてきた……こんにちは。俺たちが、お前を見つけ出してやるからな。なんなら場所まで案内してくれても良い」
洛世の言葉に、女の子の表情が曇る。
案内したいような雰囲気もある気がするが、出来ない理由があるのだろう。
「もし、連れて行ってくれるなら、教えてね。それまでは僕らが探すよ」
そして、洛世と手を繋いだまま。洛世の学ランの裾を女の子が掴んだまま、捜索は始まったのだった。
捜索、というより、ゴミ拾いがメインになった。
空き缶、ペットボトル、紙、コンビニ弁当の包装紙。
ありとあらゆるものがそこに落ちている。
それを拾い集めながら、取っても取っても、終わらないゴミの量には、辟易した。
「こんなにゴミ、投げ捨てやがって」
洛世が、小さく舌打ちをする。
手を繋いで居るため、効率が悪い。途中から、それぞれゴミ拾いをすることにしたので、少し距離がある。
舌打ちに、女の子が少し怯えた表情を見せた。
「そうだね」
「ここにさ、この子がいるんだぞ。誰にも発見されないのに、ゴミばかり毎日降ってくるんだぞ!」
洛世の言葉は意外なものだった。
ここに居るだろう、女の子のために、憤っているのを知ったとき、女の子の表情が、少し緩む。
晶哉は、少し休憩がてらに、女の子に話しかけて見ることにした。
「オジサンウサギの健次郎、好きなの?」
『うん』
「そうなんだ」
『あのね、健次郎は、アパートの下の階に住んでる、ルミコさんって女の人が好きなんだよ』
「へえ」
『健次郎ね、毎日、ルミコさんの部屋をこっそり覗いてるの』
「ヤバくない……それ」
『それで、ルミコさんは、バツイチでホステスをやってるんだけど、子供がいて、わたしと同じ名前なの』
「えっ」
『名前はね』
名前は、聞き取れなかった。
けれど、重要なヒントを貰った。急いで洛世のところへ駆け寄って、経緯を素早く伝えてから、手を取る。
「ルミコさんの娘と、同じ名前なんだな?」
洛世が聞く。
『うん』
「じゃあ、とわ、だ。永遠と書いてとわ。最初、ルミコは、永遠と書いてエターナルって名前にしたかったらしいが、元旦那に反対されてとわになったと書いてあった」
「え、洛世、あれ全部、覚えてるの?」
「唯一の手がかりになるかも知れないからな」
凄すぎる、と晶哉は舌をまく。晶哉は、このシュールすぎる設定で、あのサイトを熟読することから匙を投げている。
「とわちゃん。だね」
確信を持って、洛世が彼女に聞いた。
『うん』
とわは、満面の笑みを浮かべている、と晶哉は感じていた。
洛世は、また別な何かを考えて居るようだった。繋いだ手が、ぎゅっと握り返された。
洛世が、呆れたような顔をしながら言う。
学校の『公認同好会』となった証の、腕章を付けた姿で、軍手と、ゴミ拾い用のトング。そしてビニール袋。マスク。ヘッドライト。
「いいだろ? 『ボランティア同好会』ってことで、通学路のゴミ拾いをやりますって言ったら、受験対策とか学校のPRにも良いなって、大賛成されたよ」
「俺にはなかった発想だ」
「とにかく、これで、問題なく、捜し物は出来る。……あの女の人が立っていたあたりが一番怪しいと思うから、その辺を、重点的にやろう」
学校に至る通学路の丁度半ばくらいのカーブの所だ。
「たしかに、あのあたりはゴミが酷いな」
「車の人たちが、ゴミを投げ捨てるからね」
「人として終わってるだろ」
ため息を吐きながら、現場に向かう。女の人は居なかったが、女の子はいた。
「晶哉」
洛世が手を出してくる。その手を、晶哉は握り返した。
「あ、見えてきた……こんにちは。俺たちが、お前を見つけ出してやるからな。なんなら場所まで案内してくれても良い」
洛世の言葉に、女の子の表情が曇る。
案内したいような雰囲気もある気がするが、出来ない理由があるのだろう。
「もし、連れて行ってくれるなら、教えてね。それまでは僕らが探すよ」
そして、洛世と手を繋いだまま。洛世の学ランの裾を女の子が掴んだまま、捜索は始まったのだった。
捜索、というより、ゴミ拾いがメインになった。
空き缶、ペットボトル、紙、コンビニ弁当の包装紙。
ありとあらゆるものがそこに落ちている。
それを拾い集めながら、取っても取っても、終わらないゴミの量には、辟易した。
「こんなにゴミ、投げ捨てやがって」
洛世が、小さく舌打ちをする。
手を繋いで居るため、効率が悪い。途中から、それぞれゴミ拾いをすることにしたので、少し距離がある。
舌打ちに、女の子が少し怯えた表情を見せた。
「そうだね」
「ここにさ、この子がいるんだぞ。誰にも発見されないのに、ゴミばかり毎日降ってくるんだぞ!」
洛世の言葉は意外なものだった。
ここに居るだろう、女の子のために、憤っているのを知ったとき、女の子の表情が、少し緩む。
晶哉は、少し休憩がてらに、女の子に話しかけて見ることにした。
「オジサンウサギの健次郎、好きなの?」
『うん』
「そうなんだ」
『あのね、健次郎は、アパートの下の階に住んでる、ルミコさんって女の人が好きなんだよ』
「へえ」
『健次郎ね、毎日、ルミコさんの部屋をこっそり覗いてるの』
「ヤバくない……それ」
『それで、ルミコさんは、バツイチでホステスをやってるんだけど、子供がいて、わたしと同じ名前なの』
「えっ」
『名前はね』
名前は、聞き取れなかった。
けれど、重要なヒントを貰った。急いで洛世のところへ駆け寄って、経緯を素早く伝えてから、手を取る。
「ルミコさんの娘と、同じ名前なんだな?」
洛世が聞く。
『うん』
「じゃあ、とわ、だ。永遠と書いてとわ。最初、ルミコは、永遠と書いてエターナルって名前にしたかったらしいが、元旦那に反対されてとわになったと書いてあった」
「え、洛世、あれ全部、覚えてるの?」
「唯一の手がかりになるかも知れないからな」
凄すぎる、と晶哉は舌をまく。晶哉は、このシュールすぎる設定で、あのサイトを熟読することから匙を投げている。
「とわちゃん。だね」
確信を持って、洛世が彼女に聞いた。
『うん』
とわは、満面の笑みを浮かべている、と晶哉は感じていた。
洛世は、また別な何かを考えて居るようだった。繋いだ手が、ぎゅっと握り返された。