翌日から渉といることが多くなった。早朝のスケッチの途中で現れて、一緒に登校する。突然自転車を止めて撮影を始めるのも相変わらずだった。教室では隣席だし、大西や植田も加わって話す機会も自然と増え、徐々に彼らとも会話を交すようになった。

 渉が現れてから一ヶ月ほどで夏休みになったが、一日二時間ほどの受験向け講習を受けに登校している。
 合間の休憩時に、悠希と渉の席まで来た大西が言った。
「キャンプは植田の親が泊まりはダメということで中止。その替わり海で花火大会に決定」
「花火大会なんてあるの?」
 悠希が聞くと、植田も近づいてきて答えた。
「自主的花火大会な。海に行って市販の花火をやりまくる」
 渉が茶化すような口調で言う。
「会場までは自転車だよな」
「まあ、しょぼいけど我慢して。やっぱ受験生だし泊まりは親が許してくれないんだよな」
「でも、泊まりじゃなくてもナンパはできるだろ」
 渉の言葉に、植田は呆れたように返す。
「渉と大西はそればっか」
「俺は違うって。大西のために言ってんだよ」
「なんだよ。おまえが一番得意なくせに」
 盛り上がってる彼らを眺めているだけの悠希だったが、以前のような冷めた気持ちではなかった。
 彼らとの関係が続くかはわからない。だけど、一緒にいる時間が楽しければいいと思う。楽しいと思った瞬間の気持ちに嘘があるわけではないし、離れずに続いていく可能性だってゼロじゃない。
 そう思えるようになってきたのは、渉のおかげだろう。
「じゃあ、明日の晩な」
 大西の一声で、自主的花火大会の日程が決まった。

     ※