「これ、なに? 炭酸とか?」

 瓶の中身は、瑞希が初めて見るものだった。

 透明で水のようだが、上のほうには葉っぱのようなものと、それから黄色いものが浮いている。

「ミントウォーター」

 玲望は上に浮いているものたちを一緒に注がないように注意して、そろそろグラスに注いでいく。

「ミント、いっぱい育ったから。それとレモンを入れて冷やすだけ」

 ベランダで簡単な野菜を育てている玲望。

 大概豆苗のリサイクルなどなのだが。

 それで今はミントが採れると。

 そういうことらしい。

「へぇー、オシャレだな」

 瑞希が来るのを知って作ったものではないだろうに、どうもこのミントウォーターはまだ手をつけられていなかった様子。

 もしかすると、と瑞希は思った。

 自分が来てくれたらいい、と思って作っておいてくれたのではないか。

 これを言えば玲望は怒るし、そんなわけないだろ馬鹿、とか言うだろうけれど、間違ってはいない気がした。

 自然に笑みが浮かんでしまうけれど、瑞希はそれだけにしておいた。

「じゃ、仲直りに乾杯!」

 代わりにグラスを掲げる。

 玲望は「大袈裟な」と言ったけれど、自分もグラスを持ち上げて、かちりと瑞希のグラスと合わせてくれたのだった。



 ミントウォーターは、ミントのほろ苦い味と、レモンの酸っぱい味がした。

 きんと冷えて、汗ばむ体に心地良く染みる。

 今は苦みが混ざるけれど、それだって玲望と過ごす時間のひとつ。

 美しくて、かわいらしくて、でもちょっと素直でない。

 そんな玲望との時間は、どんな季節もきらきら輝く金色で瑞希の一番近くにある。