アイスを買うにあたって、塩レモン味なんて選んだのはそこ、玲望の外見からだ。

 そのくらいには玲望のことをそこここから考えてしまう、と瑞希はたまにくすぐったくなるのだ。

「いただきまーす」

 二人して、びりびり、と包装を豪快に破って、ぱくりと咥える。

「ん! しょっぱ!」

 ひとくちかじって、玲望はきゅっと目をつぶって言った。

 だがそのあとにすぐ付け加える。

「……酸っぱ? どっちだ?」

「んー……酸っぱいほうが強いかな、俺は」

 塩レモン、なので、塩のしょっぱさとレモンの酸っぱさが同時にある。

 どちらが強いかは……瑞希は『レモン』と取った。

 玲望は確かめるようにもうひとくちかじって、そして今度は口の中で味わう様子を見せる。

「そうだなー……確かにレモンだな」

「だって塩はオマケだろ」

 『塩レモン』なのだからメインはレモンで、塩は添え物に過ぎない。

 茶化すように言った瑞希に、玲望もくすっと笑う。

「オマケ言うなよ」

 部屋の開けた窓からは涼しい風が入ってきていた。

 そろそろ夕方に差し掛かる。

 昼間はだいぶ蒸すのだが、夜はまだ涼しいこともある。

 六月も終わり。

 先月変わった夏服もすっかり馴染んだ。

 瑞希と玲望にとって、夏制服を着る、最後の夏である。