部員のことを、瑞希は信頼していた。

 たまにいさかいが起こったとしても、少々のことなら収める自信もある。

 あまり心配はしていなかった。

「なんか売るのはどうでしょう」

 その中で言ったのは、二年生の浅倉(あさくら)だった。

 活動にも特に積極的な後輩で、瑞希はひそかに次期部長としてもいいだろうな、と考えている部員だ。

「なにか……手作りのものとかか?」

 瑞希が答えたことで、部員の視線が浅倉に集まる。

「はい。たまにあるじゃないすか。マルシェ? とか、そういうハンドメイドや要らないものを売ったりとか、そういうイベント」

 浅倉の説明を受けて、ざわざわと部員たちが話しはじめる。

「ああ、駅前でたまにやってるよな」

「日曜日とか……」

「俺、見に行ったことあるぜ。結構楽しい」

 いずれも好感のある反応だった。

「夏休みには大規模なものがありそうですし、それに出展するって手もありますし」

 書記がホワイトボードに『マルシェ』『なにか売る』と書いていく。

 瑞希はそれをちらっと見た。

 そして机の並ぶほうを見る。

 書記のもう一人が、ノートに同じ内容を書きつけているのも見る。

 計画は順調そうだ。