ふっと笑ってしまった。

 ちょっと、いや、だいぶ変わり者の玲望。

 でもとても優しい性格をしているし、それが自分に向いてくれているのも嬉しいと、瑞希は思う。

 だからこそ自分だってこんなボロいアパートにも通ってしまうのだし、月イチで掃除なんてしてしまう。

 ……玲望に会えるから。

 玲望のために動けるから。

 一緒に過ごせるから。

 ふと思ったことに、瑞希は体を乗り出した。

 玲望が目を丸くする。

 ひかれるように顔を近付けていた。

 玲望のさらっとした金髪が目に映った。

 ああ、レモンのように艶やかで輝かしい。

 食べればきゅっと酸っぱいレモン。

 けれどその酸っぱさに虜になってしまう。

 触れたくちびるもそれと同じ、きゅっと酸っぱい味がした。

 一緒に飲んだレモネードの味。

 玲望の手が伸ばされる。

 瑞希のシャツが握られた。

 ねだるような仕草をされて、一旦離れたくちびるがまた触れる。

 酸っぱさと、その中に混ざるはちみつのほのかな甘さ。

 たっぷり味わって、顔を引いて。

 赤く染まった目元の玲望に、瑞希の目にはふっと笑みが浮かんでいた。

「ファーストキスはレモン味だな」

 む、とそれには玲望が膨れる。

「なにがファーストだよ」

 どうやら不満だったらしい。

 そうだろう、恋人同士になってから、一体何回キスをしてきたか。

 それでも。

「何回だって、初めてみたいな気持ちだよ」

 何度キスをしたとしても、初めての甘酸っぱさはずっと残っているのだから。